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涙の失格、隠せない不安…それでもなぜ高梨沙羅25歳は“現役続行”を決意したのか? 再確認した“自分のために飛ぶ”覚悟
posted2022/06/23 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
それは原点を確かめることができたからだったかもしれない――。
6月17日、ノルディックスキー・ジャンプの高梨沙羅は、自身のインスタグラムを通じて現役続行の意向を表した。
「ここ数週間、気持ちが定まらない中で合宿に入りました。」
と、合宿を行なっていることを伝えた上で、こう続けた。
「試合へ向けた練習とゆうよりは、まだ飛べるのか、自分の気持ちを確認したくて始まった合宿でしたが、トレーニングしている中で、純粋に飛ぶことが好きだとゆうことを再確認できた時間でした。」
そしてこう結んでいる。
「チームに貢献できるよう精進したいと思います。」
これからどう進んでいくのか――。高梨の動向には、スキー界をはじめ、関心が寄せられていた。2018年平昌五輪のときには、大会を終えてすぐさま「4年後を目指します」と明言したが、3度目の五輪シーズンでの言葉はそれとは対照的だった。
スーツ規定違反で失格、崩れ落ちた姿
昨シーズンを締めくくるワールドカップ最終戦を終えたあとの言葉が象徴的だ。
「来シーズンに向けて自分がどうしていくかについては考えて、周りの人たちと話し合いをしなければならないと思っているので、今、この場では答えを出せないです」
競技を続行するかどうか逡巡した大きな要因は、2つの失意をもたらした北京五輪にある。1つは個人ノーマルヒルで4位であったことだ。高梨自身、「世界一になる」ことを目標に掲げての結果に、涙を浮かべた。