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「卓球より勉強を」「東北大へ進んでほしかったんです」「宿題ちゃんとやってる?」張本智和(19)の父が明かす“天才児の子育て術” 

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城島充

城島充Mitsuru Jojima

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2022/06/27 11:00

「卓球より勉強を」「東北大へ進んでほしかったんです」「宿題ちゃんとやってる?」張本智和(19)の父が明かす“天才児の子育て術”<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

2018年の張本智和。彼を日本随一の卓球プレーヤーにした育成法とは?

 卓球は一通りの技術を習得するのに、2万1000時間かかるといわれている。1日6時間の練習を1年間に350日やれば、10年で到達できる数字である。

小学校卒業まで、1日2時間以上の練習したことがなかった

 小学生時代にそれぞれのカテゴリーの全日本選手権を6連覇、18歳以下のカテゴリーで争われる世界ジュニアを昨年12月、史上最年少の13歳163日で制した少年は、まさにその“理論”に当てはまる鍛錬を幼少期に積んだかのように報じられた。しかし、宇は「小学校を卒業するまで、1日2時間以上の練習なんてしたことがなかった」と言う。

「どんな特別な練習をしてたんですかってよく聞かれるのですが、私は仙台ジュニアクラブの指導者ですから、60人近くいる子供たちを平等に指導しなければいけません。智和にも他の子供たちと同じように、正しいフォームをしっかり身につけるように指導しただけです。自宅には卓球台がありませんから、マンツーマンで指導する場所もなかった。何より、妻が卓球よりも、勉強をがんばるよう智和に言い続けてきましたから」

 仙台ジュニアクラブの練習は午後9時までだったが、練習中に張本だけコートから姿を消すことがあった。母が「練習をきりあげて早く家に帰ってきなさい」と連絡してきたからだ。「今日はしっかり食事をとって、ゆっくり眠りなさい」と。

智和は自ら希望して学習塾に通い始めた

 クラブの練習が休みの木曜だけは家族3人で卓球台に向かったが、練習時間はふだんのチーム練習と同じく2時間だった。

「卓球は感覚のスポーツですから、小さいころから練習すればするほど、その感覚が早く身につくのは間違いありません。智和がいろんな大会で優勝するようになると、私はもっと練習に時間をさくべきではないかと思うこともありました。でも、妻はなにより、智和の体のこと、そして将来のことを考えていました。しっかりと勉強して、地元の東北大学へ進んでほしかったんです」と、宇は苦笑しながら振り返る。

 張本自身も、向学心の強い少年だった。小学校にあがる時、自らが希望して近所の学習塾に通い始めた。朝起きると、30分かけて塾の宿題プリントを仕上げてから登校する。授業を終えて帰ってきても、まず学校の宿題を終わらせてから、仙台ジュニアクラブの練習場に向かった。学習塾が実施する全国模試では、常に宮城県下で10番以内に入る成績だったという。

短い時間のなかで卓球も勉強も一生懸命やった

「時間をしっかりと区切って、短い時間を有効に使う生活習慣を身につけました。智和は負けず嫌いですから、その短い時間のなかで卓球も勉強も一生懸命やった。その結果、集中力は他の子供たちより高められたと思います」

 中国の卓球界は、国家的な強化プロジェクトで選手を育成してきた。地方の「業余体育学校」といわれるスポーツ専門学校に集められたエリート候補たちがふるいにかけられ、一部の優秀な選手は学校を離れて地元の省の代表選手として指導を受ける。8歳で本格的に卓球を始めた宇は、13歳の時に四川省の代表チームの一員になった。

【次ページ】 智和が日本の環境に適応できるように育ててきただけ

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