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消えない暴力、増える帰宅部…では本当に“学校と部活は切り離す”べきか? 中学野球の名将(現・仙台育英部長)は「趣旨には賛成。しかし…」
posted2022/05/25 06:00
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Takahiro Kikuchi
それでも、今も野球部に希望を抱いて入部する選手が確実にいる。かつて中学軟式野球界のカリスマと呼ばれ、今年4月に仙台育英高校の野球部長に電撃就任した猿橋善宏氏に「中学軟式野球部で得られるもの」、そして「部活動の今」を聞いた。
◆◆◆
――中学軟式野球部での活動で、部員が得られるものは何でしょうか?
猿橋 自分というものを見つめ直し、よりよい方向にいくための手法や経験を得られます。自己改善の方法を知り、自己肯定感が上がることが一番大きいでしょう。
――プレーがうまくなる以前に、人間的な成長があると。
猿橋 それを仲間とともにやれるわけです。つまり、共感的人間関係を生みやすい。そこに忘れがたい「ふるさと」が生まれて、幼馴染ができる。大人になってから幼馴染はできません。人間としての原風景が生まれる経験になるでしょう。
――それは野球部に限らないのでしょうか。
猿橋 僕は、スポーツはみんな同じだと思います。野球だけが素晴らしい競技だなんてことはありません。もっと言えば読書会だって、星を見る会だって、なんだっていいんです。好きなことを頑張って、面白かったという経験はすごく大事。その経験ができる場と学校が結びついているということが、僕はすごく重要だと考えています。
「放課後に家でオンラインゲーム」は問題か?
――スポーツ庁が全国の中学2年生およそ100万人を対象に実施した調査(令和1年)によれば、男子14.8%、女子11%が帰宅部という結果が出ました。平成26年からの5年間で、男子は2.7ポイント、女子は1.9ポイント上昇しています。
猿橋 僕はいろんなタイプの子とコミュニケーションを取ってきたんですけど、帰宅部の子が帰宅して何をすると思います?
――ゲームでしょうか?
猿橋 そうです。オンラインゲーム。我々だったら公園で缶蹴りしていた感覚で、オンラインゲームに入るんですよ。つまり、昔も今も子どもたちは「みんなと遊びたい」という欲求を持っていて、それが今はゲームという媒体に吸い込まれただけです。
――そう聞くと、決して悪いことではないような気がしてきます。