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9年前、ダルビッシュ有が「あと1人」まで迫った“奇跡のパーフェクト”…27人目にヒットを許した後の笑顔はとてもチャーミングだった 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2022/04/22 06:00

9年前、ダルビッシュ有が「あと1人」まで迫った“奇跡のパーフェクト”…27人目にヒットを許した後の笑顔はとてもチャーミングだった<Number Web> photograph by AFLO

2013年4月2日、完全試合まで「あと1人」に迫る快投を見せたダルビッシュ有。MLBの舞台で圧倒的な実力を証明した

 この日のダルビッシュは、前年から比べてフォーシームを減らし、カットファストボール(カッター)を多投していた。とにかく球のキレが抜群で、三振の山を築いたが、13年のダルビッシュはシーズン奪三振277、9回あたりの奪三振数は11.9で、いずれもメジャートップ。そして彼のこれまで8年に及ぶキャリアでも最も高い数字である。「トミー・ジョン手術前」のベストシーズンだろう。

 20年の今季もカッターを多投して成功を収めたが、より制球が磨かれ、四球1個に対する三振の割合が6.64となり(13年は3.46)、13年よりも洗練された投手になっていることが分かる。トミー・ジョン手術の前後で、ダルビッシュは違ったスタイルでドミネートすることに成功しているが、カッターが鍵であることに共通項がある。

あと1人…迎えたのは9番ゴンザレス

 13年4月2日、ダルビッシュは7回にも1個、8回には2個の三振を積み上げ、ひとりのランナーも許さなかった。残すは9回のみである。

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 7番のジェイソン・カストロを遊ゴロ、8番のカルロス・コーポランを二ゴロで26個目のアウトを取る。いよいよ完全試合まであと一人。打席に迎えたのは、9番のマーウィン・ゴンザレスである。

 この年、アストロズはメジャーワーストとなる111敗を喫した弱い、弱いチームだった。そのなかでゴンザレスは前シーズンの打率は2割3分4厘、このシーズンもヒット45本、打率は2割2分1厘に終わっている。この日も最初の打席では三振、6回は一ゴロ。弱小アストロズの9番打者なのだから、完全試合は達成されたも同然かと思われた。

 ところが――。

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