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なぜ男子マラソンで“ベテランランナー”が活躍できるのか?…35歳佐藤悠基に聞く「年齢は言い訳にできない」〈世界王者キプチョゲも37歳〉
posted2022/03/26 11:01
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
JMPA/Shigeki Yamamoto
近年、マラソンの高速化が止まらない。それ以上に驚かされるのが30代後半の選手がマラソンで大活躍していることだ。
瀬古利彦(日本陸連のロードランニングコミッションリーダー)が1986年10月のシカゴで2時間8分27秒(当時・世界歴代10位)のパーソナルベストで走ったのは30歳。現役を引退したのは32歳のときだった。
時は流れ、高岡寿成(中長距離・マラソン担当シニアディレクター)が2002年10月のシカゴで2時間6分16秒の日本記録(当時)を打ち立てたのは32歳。38歳まで現役生活を送った高岡が最後に2時間10分を切ったのは2006年2月の東京国際(2時間9分31秒)で35歳のときになる。
今年の東京マラソン2021で35歳にして自己ベストを叩き出した選手がいる。2時間8分17秒をマークした佐藤悠基(SGホールディングス)だ。しかも、「うまくハマらなかった」というレースでの“快挙”だった。
佐藤はキロ2分57秒ペースで進んだ第2集団でレースを運び、中間点を1時間2分39秒で通過する。ペースメーカーが離脱した25km以降は日本歴代5位の2時間6分26秒を持つ土方英和(Honda)についていくかたちで走り、自己ベストを41秒更新した。
レース後の記者会見では、「今回は終始うまくハマらなかったレースだったかなと思います。そのなかでも自分なりにレースを修正して、最低限粘りました。少しは成長しているのかなと思っています」と話していた。
何がハマらなかったか。その状況でなぜ自己ベストを出すことができたのか。改めて取材を申し込むと、佐藤のマラソンに対する“探究心”と“快走の予感”を知ることになった。
トラックも駅伝も好成績ばかり…なのにマラソンでは
佐藤は3000mで中学記録、10000mで高校記録、5000mでU20日本記録を樹立。日本選手権10000mでは4連覇を成し遂げた。箱根駅伝で3年連続の区間新を打ち立てると、ニューイヤー駅伝では最長4区で3度の区間賞を獲得している。
トラックや駅伝で非凡な才能を見せつけたが、マラソンだけはうまくいっていなかった。従来の自己ベストは2018年の東京でマークした2時間8分58秒。彼のキャリアを考えると、明らかに物足りないタイムだ。
そのなかで35歳の佐藤はどう“進化”したのか。
当初は昨年10月に予定されていた東京マラソン2021(今年3月に延期した)の出場を予定しており、昨夏はマラソン練習に励んでいたという。そのとき“新たな取り組み”を実施していた。