オリンピックPRESSBACK NUMBER
なぜ男子マラソンで“ベテランランナー”が活躍できるのか?…35歳佐藤悠基に聞く「年齢は言い訳にできない」〈世界王者キプチョゲも37歳〉
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJMPA/Shigeki Yamamoto
posted2022/03/26 11:01
今月開催された東京マラソン2021。この大会で35歳にして自己ベストを更新したのが佐藤悠基(SGホールディングス)だ
「今まで以上にちゃんと距離を踏むことを意識して、ポイント練習の日以外は朝練習で20km走るようにしたんです。距離を走ることへの“慣れ”ですね。距離に対する自分の基準を上げたのが良かった。過去のマラソン練習はどんなに頑張っても月間で1000kmぐらいでしたけど、8月は余裕を持って1100kmちょっと踏めたんです」
昨夏からマラソン仕様にチェンジ
2020年シーズンは“トラック仕様”で仕上げて、12月の日本選手権10000mで7位(27分41秒84)。昨年のニューイヤー駅伝は最長4区で9年ぶりに区間賞を獲得した。昨年6月の日本選手権5000mでも6位(13分38秒40)に入っている。昨夏からは“マラソン仕様”にチェンジ。7月3日のホクレン・ディスタンスチャレンジ士別大会では朝練習で18kmを走りながら、5000mで34歳の日本人最高記録となる13分35秒74をマークしている。
「無理せず、いかに距離を踏むのか。その感覚をつかむことができたんです。秋は駅伝に向けてトレーニングを積み、ニューイヤー駅伝後は1週間ぐらい休んでからマラソン練習に入りました。本格的なトレーニングができるのは約2カ月。その間にどこまで詰め込めるのか、考えながらやってきました」
2月13日の全日本実業団ハーフマラソンは距離を踏みながら出場した。そこで佐藤は自己ベストとなる1時間0分46秒で11位に入っている。
「距離を踏んでいたので、常に体が重たい状態でポイント練習をやっていました。重たいけど、動かせるような状態を維持してきたんです。実業団ハーフもほとんど調整していません。本番前の3日間は1日20kmほどに落としたぐらいで、4日前には朝30km走って、午後はスピード練習をやりました」
東京マラソンに向けた練習の一環で出場したレース。佐藤は「1時間2分ぐらい」を想定していたが、トップ集団でレースを進めると、思った以上に動きが良かったという。
「最初はきつかったんですけど、後半は楽になって、かなり余裕があったんです。最後は自分を押し殺して、ラストスパートしないように抑えました。雨で気温も低かったので、ダメージを残さないことを優先しました。実業団ハーフまでは本当に良かったんです」
誤算だった「東京マラソン、2週間前の40km走」
佐藤の誤算は1週間後に行った40km走だった。実業団ハーフに続き、動きが良かったことが、その後の苦悩につながることになる。
「40km走は2時間17~18分ぐらいでいいかなと思ったんですけど、2時間10分台でやっちゃったんです。動いていたのと、最後に全部抜けばいいかなと考えたら、イマイチ(疲労が)抜けなかったんです。残り2週間は体がだるい感じで、変な重さがずっと残ってしまった。それがレースにも影響しましたね」
佐藤によれば東京マラソン2021は、いつもなら余裕を持って走れるキロ2分57秒ペースを「速い」と感じていたという。「動き的にも乗り切れない感じ」がずっと続いていた。しかし、このような状態でも自己ベストを更新できたことに手応えをつかんでいる。