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日本企業のデザインで進む“バルサのカンプノウ改築”建築士に直撃!「100年先を見越した計画へ」「再開発には5つのプロジェクトが…」 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2022/03/21 11:00

日本企業のデザインで進む“バルサのカンプノウ改築”建築士に直撃!「100年先を見越した計画へ」「再開発には5つのプロジェクトが…」<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

特別にカンプノウで撮影した日建設計のメンバー。“新カンプノウ”はどんなものになるのだろうか

野村「元々の計画ではスタンドの一階席を解体・新設する予定だったのですが、そのためにはソシオの何割かの人たちに3段目に移動してもらう必要がありました。ラポルタ会長からはスタンドの1段目と2段目はほとんど変更せず、ソシオの移動を最小限にしてほしいという依頼がありました」

風間「スタンドの3段目は1982年のスペインワールドカップの頃に増築した部分なのですが、新しい構造体にしては老朽化が進んでいました。そこで思い切ってこの3段目の構造をすべて解体し、新しい構造体として作り変えてしまおう、という話になっています。さらに1段目に計画する予定だったVIPエリアをこの2段目と3段目の間に新設することで、より大きなVIPエリアを確保してほしい、という依頼がありました。また、新設の構造体を作るために地下を掘るため、そこに地下駐車場も併せて計画しています」

よりオープンなスタジアムに

伊庭野「周辺の街ともっとつながるような提案をしてほしい、ということも言われています。我々の提案はすでに外装を設けないことで周囲に対して開いた建物になっているのですが、地上階でももっとコンセプトを展開してほしいということだと理解しています。例えばスタジアムの北側に現在は使われていないラ・マシアの建物があるのですが、その建物との関係性や、周辺道路との連続性なども改めて議論しています。

 あとは元々スタジアムの外側に計画していたバルサミュージアムをもっとスタジアムの近くに移し、試合のある日はその場所を立食スタイルのラウンジとして利用するなど、ホスピタリティエリアとして計画してほしい、という依頼もありました。これらの変更はひとまず完了した我々の実施設計からの微修正というわけにもいかないため、設計体制も立て直し、修正作業に当たっているという状況です」

――かなり大掛かりな変更じゃないですか。

伊庭野「そうですね、ただ今回の変更でありがたかったのは、FCBとしては、2016年のコンペの際の日建設計のデザインについては最大限尊重して頂けたことです。我々が提案していた『地中海性気候から導き出された三枚の大きな庇(ひさし)によるオープンなスタジアム』という提案は会長が変わっても引き継がれることになりました。新しい経営陣の議論では、様々な案が検討されたようですが、最終的には1957年から続く伝統と歴史ある既存のスタジアムを改修し、使いながら工事をしていく、という選択をされました」

「再開発の5つのプロジェクト」とは

――先日行われたレファレンダム(ソシオ=クラブ会員による投票)では新たなスタジアム計画の是非が問われ、大多数の承認を得ました。日建設計もレファレンダムには関わったのでしょうか。

【次ページ】 工事中のホームゲームはどうやって運営していく?

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