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藤井聡太“最年少名人”のチャンスは1回だけ… 60年で9例の「初の順位戦A級→1期で名人戦挑戦」羽生善治、谷川浩司以外だと誰?

posted2022/03/16 11:00

 
藤井聡太“最年少名人”のチャンスは1回だけ… 60年で9例の「初の順位戦A級→1期で名人戦挑戦」羽生善治、谷川浩司以外だと誰?<Number Web> photograph by Kyodo News

藤井聡太五冠が19歳にして挑む順位戦A級。果たして「最年少名人」への道はつながるか

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)は3月9日、2021年度B級1組順位戦の最終戦で佐々木勇気七段に勝って10勝2敗の成績を挙げ、19歳7カ月でA級に昇級した。これは、加藤一二三・九段の18歳1カ月の最年少記録に次ぐ。順位戦でA級昇級までの期数は5期で、加藤九段、中原誠十六世名人が最短で記録した4期に次ぐ。藤井の次の目標は、2022年度A級順位戦で優勝し、名人戦の挑戦者になることだ。1992年に41歳でA級初昇級を経験した田丸昇九段に、順位戦の歴史を振り返ってもらった。【棋士の肩書は当時】

 現在のタイトル戦は、竜王戦、名人戦、王位戦、王座戦、棋王戦、叡王戦、王将戦、棋聖戦の8棋戦。このうち名人戦以外は、四段の新人棋士でも勝ち上がっていけば、単年度でタイトルを獲得できる。

 戦前の1935年(昭和10)に創設された「名人戦」は、90年近い歴史と伝統がある。

 その予選リーグに当たる「順位戦」は、A級~B級1組~B級2組~C級1組~C級2組と、階段状に5クラスに分かれている。つまり、頂点の名人に挑戦して獲得するまで、連続昇級とA級優勝を重ねても、最短で5期(年)かかるのだ。

 また、順位戦制度はプロ棋界の根幹になっていて、昇段や対局料などの基準となるほかに、棋士生命にも影響を及ぼしている。各棋士は自身の地位(クラス)の昇格と維持のために、必死に戦っている。それだけに、どんなに強い棋士でも、昇級できる好成績を挙げるのは容易ではない。

「ひふみん」こと加藤一二三の最短4期の凄まじさ

 藤井五冠の順位戦での戦績を振り返ってみる。

2017年度C級2組・10勝0敗で昇級
2018年度C級1組・9勝1敗で次々点(4位)

 藤井と同成績の3人のうち、藤井に勝った近藤誠也五段と、藤井の師匠である杉本昌隆八段が、順位上位の規定によって昇級した。

2019年度C級1組・10勝0敗で昇級
2020年度B級2組・10勝0敗で昇級
2021年度B級1組・10勝2敗で昇級

 元A級棋士や若手精鋭が混在するB級1組は、「鬼の棲み処」と呼ばれている。さすがの藤井も稲葉陽八段(2017年の名人戦挑戦者)、千田翔太七段に敗れた。最終戦で佐々木七段に敗れたら、同成績で順位上位の稲葉と千田が昇級した。つまり藤井はぎりぎりの昇級だった。

 藤井の5期にわたる順位戦の通算成績は49勝3敗(.942)。これは突出した勝率である。ほかの一流棋士たちと比較してみる。

 加藤九段はA級に最短の4期で昇級した。

1954年度C級2組・11勝1敗で昇級
1955年度C級1組・10勝3敗で昇級
1956年度B級2組・9勝2敗で昇級
1957年度B級1組・10勝2敗で昇級

 加藤の4期にわたる順位戦の通算成績は40勝8敗(.833)。※1970年度以前のB級2組以下の局数は、原則として各12局だった。

【次ページ】 羽生善治がA級昇級まで「7期」かかったワケ

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