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「名古屋はあの移籍で8億円を手にした」“ブラジル通”代理人に聞く、Jリーグ移籍金ビジネスの裏側「Jクラブは投資型補強の意識が低い」

posted2022/03/25 11:03

 
「名古屋はあの移籍で8億円を手にした」“ブラジル通”代理人に聞く、Jリーグ移籍金ビジネスの裏側「Jクラブは投資型補強の意識が低い」<Number Web> photograph by Getty Images

今季は柏でプレーするドウグラス。2010年にJ2徳島へ期限付き移籍。その後、徳島が経済権の51%を買って14年に完全移籍の形となった

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栗原正夫

栗原正夫Masao Kurihara

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Jリーグ開幕前年の92年から多くの外国人選手の移籍に関わってきた“ブラジル通”代理人・稲川朝弘氏。昨年のJリーグベスト11では、稲川氏の事務所と契約する選手が3人選出されている。“Jリーグで結果を出せる助っ人”をJクラブに紹介してきた稲川氏に聞く、Jリーグ移籍金ビジネスの舞台裏(全3回の3回目/#1#2へ)。

「いきなり天国から地獄へ落ちることもある」

 数億円に及ぶ外国人選手の移籍案件が浮上したかと思えば、5分後にその話が立ち消えになることもある。サッカーファンであってもあまり知ることのない代理人の仕事。Jリーグ開幕当時からクラブのコンサルティングという立場で選手の移籍にかかわってきた株式会社スポーツ・ソリューション・インターナショナル代表の稲川朝弘氏は「いきなり天国から地獄へ落ちることもあるし、ずっと(仕事のことを)考えていると気が狂いそうになることもある」と笑った。

 2015年3月まではFIFAのもと認可制の選手エージェント制度が敷かれ、選手の移籍交渉の代理を務めることができるのは弁護士、またはFIFA公認のエージェントに限られていた。だが、現在は登録制の新たな「仲介人(=代理人)制度」の導入により、その門戸は広く開かれている。つまり、所定の手続きを済ませれば、誰でも代理人を名乗ることが可能なのだ。

 稲川のようにFIFA公認エージェントとして長く従事してきた人間にとって、同業者が増加する状況は歓迎すべきものではないのかもしれない。だが、稲川は「一から始めるのは楽ではない。代理人の仕事には先行投資も必要です。海へ出るのに地引網ではなく、1本のモリを持っていく感じですから」とどこか悠然と構えている。

 稲川は94年に実質的な国内レンタル移籍第一号となった菊原志郎のヴェルディ川崎(現東京V)から浦和への移籍をまとめると、まだ日本人選手が海外でプレーするのが珍しかった98年には前園真聖のサントスやゴイアス(ともにブラジル)、森山泰行のヒットゴリツァ(スロベニア)への移籍の際の代理人を務めた。その後はブラジルだけでも100人以上のエージェントらと交渉を重ね、多くの外国人選手をJクラブへ紹介してきた。

「ブラジル視察に行くと1回数百万円」

 Jリーグ外国人選手歴代2位の124ゴールを挙げたウェズレイ(03年得点王)を代表に、11年にはレアンドロ・ドミンゲスとジョルジ・ワグネルのブラジル人コンビの活躍が柏に初のJ1優勝をもたらした。近年ではジョー(18年)やレアンドロ・ダミアン(21年)が得点王に輝き、昨季、J1を連覇した川崎でもレアンドロ・ダミアンのほか、シミッチ、ジェジエウらも稲川の貢献は欠かせなかった。

 稲川が仲介するのは外国人選手ばかりではなく、12、13、15年とJ1を制した広島では主軸の青山敏弘や千葉和彦(現新潟)らが稲川とエージェント契約を結ぶ選手たちだった。

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