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「19歳の藤井聡太五冠」や羽生善治九段の“偉大な連続A級29期”に胸キュン… 観る将マンガ家が描く《2月の将棋ハイライト》
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph byJunsei Chida(illustration)
posted2022/03/01 17:00
観る将マンガ家・千田先生が描いた「2月の将棋ハイライト」。これまでのイラストは関連記事からもご覧になれます!
八大タイトル以外の棋戦では、菅井竜也八段の強さが目立ちました。早指し戦の銀河戦、朝日杯オープンを立て続けに制して“二冠”を達成。骨折した影響から、銀河戦の決勝戦は左手で、朝日杯の決勝は利き手の右手で指されていました。まさに両手で掴んだダブルタイトル! マンガのような展開です。
女流タイトル戦では、女流名人戦が決着しました。伊藤沙恵女流三段が第4局で勝利し、3勝1敗で女流名人を獲得。9度目の挑戦での初タイトルに涙する姿に、僕と妻氏ともどももらい泣きしました。一方、20代最後のタイトル戦となった里見香奈女流四冠は、13連覇ならず……。って、17歳の頃から同タイトルを保持し続けていたのだから、とてつもない女流棋士なのだなと実感します。
3)羽生九段や桐山九段の偉大な足跡に敬意を
里見女流四冠の偉大さに続いて……今月は2人の名棋士がキャリアにとって大きな岐路を迎えました。
まずは桐山清澄九段です。22日に行われた竜王戦5組昇級者決定戦で伊奈祐介七段に敗れ、次局限りでの引退が決まりました。通算1000勝まであと4勝の996勝、大台到達こそならなかったですが……現役生活はなんと56年、豊島将之九段の師匠として知られるなど、74歳となった今も戦い続けた桐山九段の“長く太い”棋士人生には感服しかありません。
そして将棋界のスーパースター羽生善治九段も、4日の順位戦A級リーグ戦で永瀬拓矢王座に敗れて今期6敗目。B級1組への降級が決まりました。
将棋が実力の世界であることを突き付ける出来事となりましたが、そもそも「1993年から連続29期でA級以上」は、あらためてとてつもない大記録と実感します。さらに“来期の昇級候補であるのは間違いない”と語る棋士もいますし、第63期王位戦挑戦者決定リーグなど第一線で戦っていることは事実です。羽生九段が再び大舞台で“50代のマジック”を見せてくれることを心から願っています。
その順位戦は佳境を迎えています。A級では「西の王子」こと斎藤慎太郎八段が強さを見せつけて2期連続で名人戦への挑戦権を獲得。渡辺名人へのリベンジなるか。そしてA級昇格争いは藤井竜王、千田翔太七段、稲葉陽八段の熾烈な戦いに。3月9日に行われる一斉対局は、緊張感みなぎること必至です。
将棋はもちろん、スポーツの世界も平和あってこそと実感する今日この頃。色々と感じることはありますが……ぜひ熱くもフェアな戦いを将棋界を通して楽しめればと思っています!<構成/茂野聡士>
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