話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
11年J2にいた京都サンガをわずか1年でJ1へ…曺貴裁監督が明かす“チームが激変した瞬間”「昇格させてやりたいなと強く思った」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKYODO
posted2022/02/25 17:02
昨シーズン、京都サンガF.C.の監督に就任した曺貴裁。11年J2に停滞していたチームを1年でJ1昇格へと導いた
「シーズン前に変わる京都を目指して1年間戦ってきて、『京都は変わったね』とか、『うまくなって良かったね』と言われる選手を見て、本当に嬉しかった。よくメディアに取り上げられる颯太(川崎)も本人が気づいていないだけで、元々は色んな可能性を持っていた選手なんです。よく彼のことは航(遠藤)と未月(齊藤)の真ん中と、僕は言っているんですけど、航のように自分の失敗を自分にぶつけて改善できる頭のいい選手だし、未月みたいな気持ちの強さもある。もちろん航レベルになるには好不調の波をなくすとか、まだ努力しなければいけないところはありますけどね」
伸びていく選手を語る曺は、ほんとうに嬉しそうだ。ただ、チームの魅力を高めていくための努力は今後もつづいていく。
『寒いけど行ったるわ!』と思わせるサッカーをしたい
「京都の人は、自分が世界で一番知られている日本の街に住んでいることを理解していると思うんです。だから見に行って、よほど面白くないとファンになってくれない。『こんな寒いとこ、行きたくないわ』というのを『寒いけど行ったるわ!』というチームになる努力をし続けないといけない。ただその関門を乗り越えて熱狂的なファンになってくれたらその熱量がとてつもなく大きいというのもこの1年で分かったことでもあります。
僕はクラブというのはどんな街にあるかで変わっていくべきだと思っています。京都には京都のカルチャーがある。そのカルチャーを無視することなく、地元の人に愛されるクラブになる。そうなっていければ京都にもフットボールの文化は根付くと思うんです」
コロナでパンデミックになる前、欧州でサッカーを見て回った。日本と異なり、多くのスタジアムは駅近にあり、サッカー専用スタジアムだ。街に馴染んだスタジアム周辺にはカフェやバーなどがあり、みんな、そこで試合前の時間を楽しむ。スタジアム内は歴史とファンと選手たちのエネルギーが充満し、試合はまるで熱に浮かされたような興奮を覚える。そこに行った者にしかわからない、特別な世界がそこにある。そして、京都は、そういう文化が根付く可能性がある街だと曺は、信じている。
古巣・湘南とも激突「そこは……複雑ですね(笑)」
そのために今シーズン、J1リーグを戦う――。
開幕戦は、ホームで浦和レッズを迎え、1-0で勝利した。サンガスタジアムに訪れたサポーターの期待に応え、幸先の良いスタートを切っている。
「これからも相手を驚かせるのはもちろん、自分たちも驚くぐらい、こんなことができるようになったんだというのを見せられるシーズンにしたいんですよね」
4節には、古巣・湘南との試合が待っている。
「そこは……複雑ですね(笑)。でも、湘南も新しいチームになっているので、一相手としてリスペクトして臨みたいと思います」
魂を置いてきたチームと新たな息吹を吹き込んだチームの戦いは、曺監督にとってはただ1試合ではなく、感慨深い瞬間になるだろう。