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「弱音を吐いた瞬間に落っこちてしまうと思っていた」曺貴裁53歳の告白《パワハラ騒動と謹慎期間の1年2カ月》
posted2022/02/25 17:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
KYOTO.P.S.
2019年10月、湘南でパワハラ行為が発覚して監督を退任。1年間のS級コーチライセンス資格停止処分を受けたのち、様々な研修や流通経済大での指導を経て、2021年、自身の故郷・京都に戻り、指導者としてリスタートを切った。京都のテクニカルエリアに立つまで、曺は、どんな時間を過ごしてきたのだろうか(全3回の1回目/#2、#3へ続く)。
「自分が一生懸命にやってきた中で反省すべき点はたくさんありました」
「『もっと自分がやらないといけない』という強迫観念」
湘南の監督を辞した後、曺は弁護士からパワーハラスメントの研修などに加え、アンガーマネジメント講習を受けていた。アンガーマネジメントとは、怒りを制御して衝動的な言動を抑制し、より良い人間関係を築くためのプログラムだ。
「当然ですが、弁護士の先生にお世話になるのは初めてのことでした。研修の先生や他のスポーツの指導者の方など、色んな方との出会いがありました。そこで、“みんなそれぞれに悩みながら指導している”ということに気づけたのは救いでした」
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今や50種類以上あるハラスメントを研修で学んだ。他にもLGBTQの差別問題など、あらゆる社会問題も講習を通して知ることで「想像以上に自分の視野が知らないうちに狭くなっていた」ことに気づいた。そして視野が広がることで見えてきたのは、「一人でできることは限られている。だからこそ周りと一緒に協力し合って仕事をしなければいけない」ということだった。
「湘南時代はジュニアユースからコーチを経て監督になったので、このクラブを強くするためにどうしたらいいのかは自分が一番よく分かっていると思い込んでいました。だからこそ、何かをやろうとした時に自分の温度と周囲の温度が明らかに違うと、同じ温度を相手に求めすぎていたんです。
特にJ2からJ1に上がってチームが定着しはじめ、ルヴァン杯で優勝できたころは、周囲から求められるものも変わってきていて、『もっと自分がやらないといけない』という強迫観念みたいな思いが強くなっていました。そういう思いが強いばかりに、周囲の力を借りて対処することが自分にはなかなかできなかった」
「自分で“キャラクター”を作り上げてしまった」
湘南では、カリスマ性を持つ絶対的な指揮官だった。“曺貴裁=湘南”と捉えられ、そのことを曺自身も自負していたからこそクラブの将来を考え、クラブを強くするために言動が行き過ぎたこともあった。曺はその頃を「自分で“キャラクター”を作り上げてしまった」と振り返る。