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浅田真央が伊藤みどりにだけ語った“私にとってのトリプルアクセル”「3Aがなかったらヨナには絶対に勝てていなかった」
posted2022/02/15 17:31
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Kotori Kawashima
〈初出:2018年12月20日発売号「[スペシャル対談]伊藤みどり×浅田真央『トリプルアクセルのバトンを次に』」/肩書などはすべて当時〉
1992年アルベールビル五輪の銀メダリストと、スポーツの枠を超え、愛された国民的ヒロイン。類稀な才能に磨きをかけ、代名詞トリプルアクセルで時代をリードしたフィギュア界の伝説の2人が、お互いの歩みを語り合い、新世代へエールを送った。
◆◆◆
「(3Aを)跳ばずに負けたときは、絶対に自分が後悔する」
伊藤 真央ちゃんのトリプルアクセルは年々力強くなっていったよね。真央ちゃんが印象に残っている自分の演技は?
浅田 ソチ五輪の後の世界選手権……いや、ソチのフリーですね。私にとってトリプルアクセルは自分の気持ちを強く持たせてくれるものでした。それがなければ、きっと不安になっていたと思います。みどりさんもおっしゃっていましたけど、突き抜けるためには誰も跳んでいないトリプルアクセルをやらなければ勝てないと考えていたんです。キム・ヨナ(韓国)とは小さい頃から常に競っていましたが、ヨナができないトリプルアクセルという武器が自分の中では大きな強みでしたし、それがあるから勝てると思っていましたね。それがなかったら絶対に勝てていませんでした。
伊藤 そうかなあ。
浅田 トリプルアクセルが跳べたら、誰からも私の方が1つ上の技術をやっていると認めてもらえると考えていたので。だからこそやり続けていたんです。なにより、挑戦しなかったら後悔してしまうから。自分が決めたなら、成功しても失敗しても後悔しないけれど、先生に「やらなくていい」と言われて跳ばずに負けたときは、絶対に自分が後悔すると考えていました。
伊藤みどり、浅田真央、紀平梨花…継承されていく3A
伊藤 私がトリプルアクセルの元祖なら、真央ちゃんはトリプルアクセルを含む6種類、計8度の3回転ジャンプを跳んで、さらに今は紀平梨花選手がトリプルアクセルの後に3回転(トリプルトウループ)を付けるコンビネーションをフリーのプログラム構成に組み込んできている。トリプルアクセルも時代とともに進化を遂げているし、継承もされている印象がありますね。
浅田 私はみどりさんの後を受け継いだという気持ちでやってきて、跳べるときも跳べないときも諦めずに続けてきました。今、ジュニアも含めて、いろいろな選手がトリプルアクセルに挑戦している姿を見ると、私もしっかりと次の世代へとバトンを渡せたのかなと感じます。
伊藤 真央ちゃんが私をリスペクトしてくれていたように、今度は紀平選手たちの世代が、「真央ちゃんのようなアクセルを跳びたい」、「真央ちゃんに近づきたい」と目標や憧れを持って挑戦しているんだよね。