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ワリエワ騒動の論点「なぜロシアの選手ばかりドーピング違反が続くのか?」 過去には使用・隠ぺいで“10年間出場停止”の事例も 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2022/02/15 17:02

ワリエワ騒動の論点「なぜロシアの選手ばかりドーピング違反が続くのか?」 過去には使用・隠ぺいで“10年間出場停止”の事例も<Number Web> photograph by Getty Images

2月14日、練習に姿を現したワリエワ

ワリエワの演技にドーピングはどのように作用するのか?

 今回ワリエワの検体から検出されたのはトリメタジジンで、本来は心筋梗塞などの治療に使われている。血流を良くし、心肺機能を上げる効果があるという。

 フィギュアスケートでこれまでドーピングがそれほど大きな問題になってこなかったのは、この競技のデリケートな特性にある。技術と芸術性が半分ずつ評価されるこのスポーツでは、より強く、より早く、といった通常のアスレチックな要素以上の総合力が求められる。筋肉増強、興奮剤などによって、それまで3回転しか跳べなかった選手が突然4回転を着氷できるようになったり、素晴らしい表現力を身に着けるということはない。

 だが元々能力のあった選手が、心肺機能を上げることによって身体の疲労を最低限に抑えて最後までミスなく滑り切れるようになる、という状況はあり得る。

 ワリエワが跳んでいる3アクセル、4トウループ、4サルコウなどのジャンプ技術は、彼女の才能と努力の賜物であることは疑いもない。その一方で、プログラムを通してミスなく滑り切る体力は、彼女が本来有していたものなのか、禁止物質の助けを借りていたのか。個人戦で彼女が素晴らしい演技をすればするほど、見ている観客たちの心の中に疑問がわいてくることは避けられないだろう。

ロシア・トゥトベリーゼグループのイメージダウンは避けられない

 CASは、出場を禁じたら15歳の彼女に避けようのない害を与える、として出場許可を与えた。だが今後の調査ではっきりと嫌疑が晴れない限り、ワリエワとエテリ・トゥトベリーゼのグループ、そしてロシアのアスリート全体が受けたイメージダウンは、そう簡単に覆されることはないだろう。

 計画的な禁止物質の摂取があったとしたら、それはワリエワだけなのか。あるいはトゥトベリーゼのグループでは、過去にも隠蔽された違反行為があったのか。過去10年間多くの女子チャンピオンを輩出してきた優秀なコーチチームだけに、注目度も大きく、疑惑も膨らんでいく。

これでは未成年者の検査に意義があるのか、という疑問も

 またドーピング違反に対する処分が年齢を理由に軽減されるのなら、そもそも未成年者にドーピング検査を行う意義があるのか、という疑問もわく。ISUでは過去に何度もシニア出場資格の年齢制限を引き上げるべきだという声もあがっていたが、今回の一件が今後どのような影響を与えるのかにも注目される。

 CASはROCの団体戦金メダルの有効性についての言及はしておらず、団体戦授賞式に関しては宙に浮いたままの状態が続いている。日本チームがこのまま銅メダルなのか、ROCが失格になって銀メダルに昇格されるのかも不明だが、選手たちから五輪メダル授賞式という貴重な人生体験が奪われてしまったことは残念だ。

 ワリエワ本人と全てのスケーターのためにも、今後の調査が公正で迅速に進むことを願っている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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