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ワリエワ騒動の論点「なぜロシアの選手ばかりドーピング違反が続くのか?」 過去には使用・隠ぺいで“10年間出場停止”の事例も
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/02/15 17:02
2月14日、練習に姿を現したワリエワ
「10年間の出場資格停止」の厳しい処分も
2016年3月にはロシアのアイスダンサー、エカテリーナ・ボブロワが欧州選手権で提出した検体から、その年の1月1日からWADAの禁止物質に加えられたメルドニウムが検出された。ボブロワとパートナーのディミトリ・ソロビエフは2016年3月の世界選手権の出場資格を失った。だがその年の4月にWADAが、メルドニウムの体内に留まる期間のデータ不足を理由に、3月までの検出量が1ミクログラム以下だったアスリートの処分を免除。ボブロワも資格停止を解除され、欧州選手権で手にした銅メダルをはく奪されることもなかった。
2020年夏にはRUSADA(ロシア反ドーピング機関)が、2017年GPファイナル銀メダリストのマリア・ソツコワに対して、フロセミドの使用およびその事実を隠ぺいしようと試みた容疑に対して、10年間の競技出場資格の停止を宣言。だが実はソツコワはこの年の7月に競技引退宣言を行っており、一見厳しく見える処分も実質上の意味はなかった。
なぜロシアの選手ばかり違反が続くのか?
故意のものなのか、不注意による過失なのかはわからなくても、やはり疑問なのはドーピング違反にあたる物質が検出されるのはなぜロシアの選手ばかりなのかということだ。簡単に手に入る風邪薬などの一部に禁止物質が含まれているというのは、ほとんどの国のアスリートにとっても同じ条件であるはずだ。
もともとロシアは、2014年ソチオリンピックで組織的なドーピング違反の隠蔽行為があったとの内部告発により、IOCから国家としての参加資格の停止処分を受けた。いわば執行猶予中の立場であり、クリーンなアスリートのみが、個人の資格でROCの代表として参加を許されたはずだった。
だがロシアは現在でも、ソチオリンピックでの違反行為を認めておらず、政府も国民の大部分も、この糾弾は強国ロシアに対する嫉妬による西側諸国の陰謀と主張している。そもそも間違いを認めていないので、反省も、改善も見られない。