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「見送るなや、入ってるやろが!」コーチの声に若手が燃えるDeNAファームキャンプ… “牧秀悟のトンボ”に心を打たれたワケ 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKou Hiroo

posted2022/02/15 06:00

「見送るなや、入ってるやろが!」コーチの声に若手が燃えるDeNAファームキャンプ… “牧秀悟のトンボ”に心を打たれたワケ<Number Web> photograph by Kou Hiroo

DeNAファームのキャンプは盛況だった

 大和の動きは遠目からでもはっきり違いが判る。上体はすっと立っていてぶれていない。

 捕球するとスナップスローで素早く送球する。流れるような一連の動作を見ていると、牧がほれ込むのもわかる気がする。守備でFA権を行使した選手だけのことはある。牧も二塁で軽快な動きを見せていた。

 もう一人、背番号「4」をつけた大柄な内野手もボールを追いかけている。4年目の伊藤裕季也だ。2018年のドラフト2位、スラッガー候補として期待が高かったが、昨年は3試合の出場にとどまった。以前は黒髪にひげという精悍な姿だったが、最近は髪を染めている。外見で非常に際立った存在感であるが、野球そのものでどれだけアピールできるか、でもある。

ブルペンでは1球1球を入念にチェック

 練習のスケジュール表を見ると、ブルペンは「56」だけになっていた。静岡商からドラフト6位で入団して2年目の左腕、高田琢登が一人でブルペンに上がっている。昨年8月に左肩のクリーニング手術を受けて今はリハビリ中だ。

 この日は、どこまで回復したかのテストもかねての投球なのだ。

 今のブルペンは、投手がただ漫然と投球することはない。投手がブルペンのマウンドに上がると、スピードガンや球の回転を見る計測機器、ビデオカメラなどがセットされ、1球ごとにチェックする。この日の高田の場合は、回復度合いをチェックする目的もあるから、大勢のスタッフが高田の投球を見守っている。

 今年、独立リーグ栃木からブルペン捕手として入団した大坪亮介が球数を伝える。高田は1球1球慎重に投げている。

 昨年も、トミー・ジョン手術明けの田中健二朗の投球を見たが、二軍のブルペンではこういう形で、回復途上の投手の状態をチェックするテスト投球も行われるのだ。

 仁志敏久二軍監督も高田の投球をじっと見つめていた。

「和製外国人選手」の控室からは大きな歌声が

 他の投手は陸上競技場で、ストレッチなどのトレーニングを行っている。

 牽引ベルトを使って負荷をかけてダッシュする練習が繰り返し行われている。最近よく見る練習だが、下半身に粘りが出ると言われる。

 とびきり長身の外国人投手が、トレーナーを引っ張ってダッシュを繰り返している。昨年育成契約で入団したスターリン・コルデロだ。身長は201cm、ドミニカ共和国出身。昨年はやはり独立リーグ神奈川フューチャードリームスで投げていた。

 NPB球団では、メジャーリーガーを獲得するのとは別に、こういう形で無名の素材を獲得し、日本のプロ野球を叩きこんで「和製外国人選手」に育成しようとしているのだ。ドミニカ共和国やキューバの選手が多い。ディアスとスターリンの控室からは大声の歌が聞こえてきた。カリビアンらしい明るいキャラクターなのだ。

【次ページ】 3割打者の牧でもトンボで土をならす

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