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“野村克也監督の解任劇”が籠城事件に発展、内情を知る水島新司は『あぶさん』で… 柏原純一「本当に野球が、南海が好きな方でした」 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/01/25 17:03

“野村克也監督の解任劇”が籠城事件に発展、内情を知る水島新司は『あぶさん』で… 柏原純一「本当に野球が、南海が好きな方でした」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

「今でも忘れられないことがあるんです」。柏原純一さんが明かす水島漫画の秘話とは

 野球選手の心の奥底を知り、創作に生かしていたのだ。ところが、野村監督は解任された。憤ったのは本人だけではない。江夏、柏原は球団への不信感を爆発させ、用意されたトレードを拒否。自宅に閉じこもった。世に言う「刀根山(大阪府豊中市の地名)マンション籠城事件」である。水島さんは日本ハムへの移籍を承諾した柏原さんを翌年、登場させる。あぶさんと香川の高松市で再会し、酒を酌み交わす設定である。「ゴタゴタもめたな、とか日本ハムはどうだとか一切言わない」あぶさんの気遣いに、柏原が感謝する。それは騒動の一部始終を見聞きしていた水島さんだからこそ描けるリアリティであった。

柏原氏「仕方がないことなんだけど、寂しいね」

 ところで「あぶさん」のモデルは永淵洋三というのが定説だ。しかし、一部では柏原説があるが?

「それはないですね。僕の部屋に一升瓶が転がっていたから、周りがそうなんじゃないかって言ってたんでしょう。先生が僕の部屋に来たことなんかないし、先生からそんな話を聞いたこともありませんから」

 あぶさんの連載がスタートした73年は、柏原さんの入団3年目。初めて一軍の試合に出たシーズンだから、やはりモデル説はないだろう。しかし語り合い、笑った中身は、大いに創作のヒントとなったはずだ。

 解任前夜の寿司店での宴から40年以上がたち、南海というチームも大阪球場も消えた。野村監督に続き、水島さんも……。「仕方がないことなんだけど、寂しいね」。野球を愛し、野球を描ききった巨匠との別れ。柏原さんはポツリと言った。

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