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最多記録10得点でも「ちょっと少なかった」大迫勇也(鹿児島城西)が語る“半端ない”伝説の選手権「最近、うちの娘まで言うんで」
posted2022/01/10 07:15
text by
内田知宏(スポーツ報知)Tomohiro Uchida
photograph by
Shinji Akagi
初出:Sports Graphic Number 995号 <大迫勇也(鹿児島城西)「半端ない通過点」>(2020年1月17日発売、肩書きやデータなどすべて当時)
まだヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本代表の指揮を執っていた2018年3月のことと記憶している。ロシア・ワールドカップへ向けた強化を狙い、ベルギー・リエージュに遠征に出た日本代表。濡れた枯れ葉の香りと鼻に入ってくる冷気が朝を告げ、昼間はうららかな日差しが眠気を誘う。時の流れすらゆっくり感じるような地で、大迫勇也は口を開かなくなった。
ハリルホジッチ監督解任へ向けたカウントダウンの音が大きくなり、チームには無機質な空気が漂っていた。エースと言われた男も、取材対応日に「また(今度)!」と言い残し、バスに乗り込むことが増えていった。以降、ロシアW杯、昨年初頭のアジア杯でも同じ行動を取るようになった。昨年、その理由を尋ねた。
「試合をやる前に何を言っても意味ないでしょ。俺らは試合に負ければ、結果を残せなければたたかれる。プロの世界ではそうあるべき。だからやる前に何を言っても、意味がない。FWだったら決めるか、決めないかなんで。チームなら勝つか、負けるかなんで。やる前に、こうしたい、ああしたいと言ってもね」
「女性と話せないくらいシャイなので」
取材に応じない選手は今も昔も珍しくない。取材を拒まれたとき、先輩記者から授かった「日本を代表してここにいるのだから」という説得する言葉を準備していた。ただ、鹿児島城西高3年から取材してきた身としては、大義名分を振りかざす気にはなれなかった。他を入り込ませない、信条を感じたから。その感触を得たのはこれが初めてではなかった。
今から11年前、2008年度全国高校サッカー選手権大会。鹿児島城西の1回戦は、全国屈指の強豪・青森山田が相手だった。早めに市原臨海競技場に出向き、スタンドで母・美津代さんの姿を見つけ、取材した。当時の取材ノートをめくれば「点を取ってほしい」「チームが勝ってくれれば」「母の方が緊張している」「女性と話せないくらいシャイなので、これからが心配」というメモが並んでいた。
母の心配をよそに、大迫は力を発揮する。1点を追う前半39分。GKと1対1の場面から小さなフェイントで相手GKを揺さぶり、右足でゴール左隅を揺らした。ノートには「いとも簡単に」「力の抜けたフォーム」と記されている。さらに後半13分に再び1対1を迎え、右足ループシュートでGKの頭上を通した。あいさつ代わりとも言える2得点で、激戦を4-3で制した。