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“岩手の新怪物”佐々木麟太郎が全国に突きつけた「回答」 大谷翔平も立てなかった舞台で、なぜ「打率6割、2本塁打」を打てたのか
posted2021/11/25 11:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Yuki Suenaga
全国の猛者たちが照準を合わせる。
各地区の王者が覇権を争う明治神宮大会。激戦区の近畿を制した大阪桐蔭で、エース級のピッチングを見せる前田悠伍が言う。
「対戦するってなった時には、『負けてられない』って気持ちはあります」
準決勝でその前田から豪快な一発を見舞った、九州国際大付の4番・佐倉侠史朗は嘆息交じりに比較する。
「自分より全然すごいバッターですし、ホームランの数も多い。意識してしまうこともありました」
189センチ、89キロの体躯を持ち、メジャーリーグのレジェンド、バリー・ボンズになぞらえ「ボンズ」と呼ばれる広陵の主砲・真鍋慧は、短い言葉に対抗心をにじませた。
「同学年で少しは意識するんですけど」
全国の猛者たちが意識する“あの男”
明治神宮大会でさらに評価を高めた逸材たちは、まだ1年生である。その3人が意識するのは、規格外のパフォーマンスで「新怪物」の称号を得た、あの男である。
花巻東の佐々木麟太郎。
監督の佐々木洋の長男としても話題の1年生は、大会前ですでに高校通算47本塁打とアーチを量産。チームの東北初制覇を支えた若き大砲もまた、常に全国を見据えている。
東北大会優勝の直後、歓喜の余韻に浸るより、自らの現在地を再確認していたものだ。
「左投手であったり、変化球の対応も徐々にできてはいるんですけど、まだまだ自分に足りないものがあると思っているんで、その課題を修正して。全国レベルでもしっかり対応できるようにしていきたいと思います」
具体的な課題のひとつに、変化球をコースに決められると、どうしても体が前に突っ込んでしまう。そういった打席では、自慢のフルスイングが半減していた。
東北大会から1カ月後の明治神宮大会。麟太郎はその答えを、一発で示した。