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「アパパネとアカイトリノムスメは全く違う」国枝栄調教師が明かした“秋華賞母娘制覇”までの道のりと“ぶっつけ本番ローテ”の真相
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byPhotostud
posted2021/10/20 17:02
秋華賞を勝利し、アパパネとの母娘制覇を成し遂げたアカイトリノムスメ
しかし、このアカイトリノムスメもこれまでは兄達同様、GIには手が届かない競馬が続いていた。クイーンC(GIII)を優勝した後は桜花賞(GI)がソダシの4着、オークス(GI)はユーバーレーベンの2着にそれぞれ惜敗をしていたのだ。
現在は骨折で休養中だが、当時、同じ国枝厩舎にはサトノレイナスという牝馬がいた。阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)、桜花賞と連続してソダシから僅差の2着後、牡馬相手の日本ダービー(GI)に挑戦して5着。国枝調教師はこのサトノレイナスとアカイトリノムスメを比較して、以前、言っていた。
「現時点ではサトノレイナスの方が完成している感じです。でもアカイトリノムスメもさすがの良血馬だけあって素質は負けていません。こちらも将来的に完成すれば相当、走る馬ですよ」
オークスで2着に善戦しながらも未完成だと言うのだから、厩舎サイドとしては、順調に成長すればかなりの活躍を見込んでいたという事だろう。
アカイトリノムスメとアパパネを比較すると…
そんなアカイトリノムスメを、指揮官は今回、オークス以来の休み明け、ぶっつけで秋華賞に出走させた。思えば母のアパパネは前哨戦のローズSを叩いていた。春の桜花賞、オークスを連勝する前も、チューリップ賞(GIII)でひと叩きされていた。そしてチューリップ賞は2着、ローズSは4着にそれぞれ敗れていたが、本番では変わり身を見せ、見事に三冠をコンプリートしたのだ。母と比較して、国枝調教師は次のように語る。
「アパパネは筋肉質の体で叩いて良くなるタイプでした。でもアカイトリノムスメは父のディープインパクト寄りなのか細身で母親とは全く違う感じ。叩けばその1戦で体が減ってしまう可能性が高いのでぶっつけで秋華賞に出走させました」
アパパネだけでなく、その後アーモンドアイという名牝も育てた伯楽の目に狂いはなかった。
秋華賞当日の馬体重は448キロ。関西への輸送があったといえ、オークス以来の競馬にもかかわらず2キロ減の体になっていた。もし、前哨戦を使っていたら、更なる馬体減に見舞われていたかもしれない。