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ドラフト&戦力外通告が進む中… ロッテ2010年ドラ1荻野貴司「スピード+パワー」で35歳の進化〈週刊セパ記録〉 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/10/12 11:04

ドラフト&戦力外通告が進む中… ロッテ2010年ドラ1荻野貴司「スピード+パワー」で35歳の進化〈週刊セパ記録〉<Number Web> photograph by Kyodo News

ケガに泣いてキャリアを終えた野球人は数多い。それを覆すような活躍を荻野貴司はロッテで見せている

 千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)では、金にちなんだ韓国食材の弁当が売り出されてちょっとしたブームとなったが、球場に詰め掛けたファンが金以上に注目したのは、前年ドラフト1位で入団し、開幕戦から2番中堅でスタメン出場した荻野貴司だった。

 この試合で内野安打を打った荻野は、ここから5試合連続安打、4月末時点で打率.341、14盗塁1盗塁死。「右打ちのイチローだ」との声が上がる目覚ましい活躍だった。

 荻野は5月も大活躍、5月21日時点で25盗塁3盗塁死、盗塁王確実、新人王も、という活躍だったが、この日の交流戦、ヤクルト戦でスライディングの際に右ひざ外側半月板損傷、以後のシーズンを棒に振った。

 それ以来、荻野貴司のプロ野球生活は、怪我との戦いだった。右ひざの手術は3回、2014年には左肩骨折、2016年には左内腹斜筋と右大腿二頭筋の肉離れ。2018年は右手人差し指の骨折。

 172cm75kgの小さな体でアグレッシブなプレーを続ける荻野だけに、怪我や故障は付き物だったが、それにしても多すぎた。

 入団から9年目の2018年まで、一度も規定打席に到達せず。社会人野球を経て24歳で入団した荻野は、2018年オフには33歳になっていた。

今季すでに2ケタ本塁打、6本が先頭打者弾

 過去にも自他ともに許す実力の持ち主ながら、怪我や故障に泣いて消えていった選手は数多くいる。荻野もそのパターンかと思われたが、2019年に初めて規定打席に到達し、打率.315(3位)、広い守備範囲でも貢献し、ベストナイン、ゴールデングラブを初受賞した。

 2020年は右大腿二頭筋損傷、さらに新型コロナ感染で規定打席未達となったが、2021年は開幕から怪我もなく好調を維持し、打率.299(5位)、20盗塁(4位タイ)という活躍だ。そして156安打は、ソフトバンクの柳田悠岐に4本差をつけて1位。初の打撃タイトル「最多安打」にも手がかかっている。

 入団当初の荻野は、長打は少なく、単打と足で稼ぐタイプだったが、2019年に初めて10本塁打を打つと、今季もすでに10本塁打、先頭打者本塁打を6本打つなど、切り込み隊長として他球団の脅威となっている。

 プロ野球では「長打もあるリードオフマン」を「大型1番」というが、今季の荻野はまさにその名にふさわしい。

【次ページ】 パワーアップしながらもスピードが衰えない

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