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悩む国枝慎吾がフェデラーに質問「どう戦うべきか?」〈五輪金&全米OP連覇〉に導いた“絶対王者の回答”とは
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byGetty Images
posted2021/09/18 17:04
親交がある国枝慎吾とフェデラー。東京五輪前、プレーの悩みを打ち明けた国枝にフェデラーが贈った言葉がある
「僕が初めて試合に出た15年前は、みんなもっと守備的でベースラインから動かず、2バウンドで打ち、多くのポイントは相手のミスによって決まった。でも今はみんな攻撃的になり、どんどん前に出て相手の時間を奪うようになっている」
さらにリードは、国枝の強さの理由を次のように分析した。
「慎吾は、僕がこの競技を始めた時にトップにいて、今もトップだ。それはこの競技の進化に合わせて、プレーも変えているからだと思う。だから10年後も、まだ慎吾はトップにいるんじゃないかな」
敬意に満ちたライバルの分析に、国枝は照れ臭そうに相好を崩した。
逆境を乗り越え、再びつかんだ“絶対王者の称号”
今季の国枝はパラリンピックを迎えるまで、全豪、全仏、そしてウィンブルドンでいずれも英国勢に敗れ、大きなタイトルとは無縁だった。
「このままでは、東京での金メダルは難しい」
ウィンブルドンの敗戦後には、弱気な言葉も珍しくこぼしたほどだ。
その逆境の中、これまで磨き築いてきたテニスを信じ、今まで以上にネットに出る超攻撃テニスを貫いて、再びつかんだ自他ともに認める絶対王者の称号。
東京パラリンピックで2大会ぶりに金メダルを勝ち取った時、国枝は肩に羽織った日の丸で顔を覆い、肩を小刻みに震わせた。その涙は、自身が引き上げた車いすテニス界のレベルを、克己心と不断の努力で凌駕した証だった。