熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ブラジルはネイマール、ペレがいても11人制が“最弱”、ブラインドサッカーこそ“最強”!? パラ4連覇など無敵の歴史〈日本も健闘5位〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byYohei Osada/AFLO
posted2021/09/04 11:01
東京パラリンピックでの日本vsブラジル。まるで“見えている”かのようなプレーの数々に驚愕した人も多いだろう
4種類のフットボールの中では11人制が”最弱”
フットボールはペレ、ガリンシャ、ジーコ、ロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョらスーパースターを輩出。ワールドカップ(W杯)21大会で世界最多の5回の優勝を誇る。優勝確率は、約24%である。
ビーチサッカーはW杯11大会のうち5大会を制覇しているから、優勝確率は約45%。フットサルは、W杯8大会のうち5回優勝しており、優勝確率は約63%だ。
ブラインドサッカーは、パラリンピックの正式競技に採用された2004年アテネ大会から2016年リオ大会までの4大会ですべて金メダル。しかも、1試合も負けていない。ノックアウトステージにおけるPK戦勝利を引き分けとみなしても、2020年東京大会の準決勝まで22勝6分無敗。圧倒的に強い。世界選手権では、過去7大会で5回優勝している。優勝確率は、パラリンピックに限れば100%で、世界選手権を加えても約82%。
つまり、4種類のフットボールのうち、世界中にその強さが鳴り響いているフットボール(11人制)が国内的には“最弱”で、ブラインドサッカーが“最強”なのである。
晴眼者に混じってストリートサッカーをプレー
ブラジルのブラインドサッカーは、なぜこれほど強いのか。その秘密を探る前に、まずは歴史を紐解いてみたい。
ブラジルの視覚障害者スポーツ関係者によれば、この国では以前から視覚障害者が晴眼者に混じってストリートサッカーを楽しみ、視覚障害者だけでプレーする場合は空き缶や空き瓶など何かしら音がする物を蹴っていた。普通のボールでは、どこにあるかわからないからである。
そして、1960年代から盲学校やスポーツクラブなどで、フットサルが行なわれるようになった。ボールは普通のもので、無音。タッチラインには壁がなかった。このため、攻撃はドリブル中心で、パススピードは遅かった。
1984年、視覚障害者スポーツ協会(ABDC)が設立され、視覚障害者スポーツの普及と強化が始まった。
以来、ブラジル各地の市、州、地域レベルで視覚障害者のためのフットサルの大会が開催されるようになった。