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両親は反対「スケボーをやめて」…宮崎生まれの13歳スカイ・ブラウンが東京五輪でメダリストになるまで〈パリ五輪はサーフィンで〉
text by
梶谷雅文Masafumi Kajitani
photograph byGetty Images
posted2021/08/07 11:03
女子スケボード・パーク種目で、イギリスの最年少オリンピアンとして銅メダルに輝いたのは13歳のスカイ・ブラウンだった
2020年5月にスケートボードの神と崇められるトニー・ホークの特大プライベートランプでの練習中に、空中でバランスを崩して地面に真っ逆さまに落下。腕で頭をかばえたから命に別状はなかったものの、頭蓋骨と左手を骨折という大怪我を負うこととなった。
そんな娘の姿に両親はスケートボードをやめるよう説得したというが、聞く耳は持たなかった。
地面に何度たたきつけられても立ち上がって再トライする。どんなに辛い思いをしても挑戦し続けられるのは、スケートボードこそが彼女自身を表現する方法であり、愛してやまないから。彼女は当時、入院中の病院のベッドから自身のYouTubeチャンネルを通してメッセージを送っている。事故の映像とともに、右目はあざで真っ青という痛々しい姿だ。
「心配しないで。ときには転んでもいい。でも立ち上がって、さらに強くなって戻ってくる。世界でいろんなことが起きているけど、何をするにしても愛と幸せな気持ちが大切」
今回の東京五輪は、生死をさまようほどの大怪我を乗り越えての出場だったのだ。
“鬼ダサいトリック”をあえて選んだスケーター
これは余談だが、スカイと似た境遇で今回の女子パークに臨んだスケーターがいることはあまり知られていない。
長年、女性スケートコミュニティを牽引してきたリジー・アーマント。彼女もスカイと同じく父方の国籍を選んでフィンランド代表として出場しているが、活動拠点はアメリカ・カリフォルニアで、スカイと同じく2020年に大怪我を負ったひとり。巨大なメガランプ(スキーのジャンプ台とハーフパイプを組み合わせたような特大セクション)で撮影中に空中から奈落の底へ転落し、太ももの付け根と背骨の一部を骨折するという重傷を負っていた。
リジーは決勝にこそ残れなかったが、予選ではローストビーフグラブというスケートコミュニティでは“鬼ダサい”とされるトリックを披露。これは2020年に他界した彼女のメンター的存在であるプロスケーターのジェフ・グロッソが’80年代に発案したとされているトリック。つまり、リジーは五輪という世界の大舞台で、亡き恩師に敬意を払うために敢えてこのようなトリックを選んだということ。出場スケーターの笑顔の裏にはさまざまなドラマが存在するのだ。
アメリカの著名スケーターに日本と縁深い人も
話はそれてしまったが、今回の女子パークを観戦してわかるように、スケートボードに人種や国籍など関係ない。しかし、スカイが日本とゆかりのある選手であることに親しみを感じる人も少なくないだろう。