卓球PRESSBACK NUMBER
「私が対応できたことでどんどん流れが…」水谷隼の長年の“使命”「打倒中国」を呼び寄せた、伊藤美誠の“恐れを知らない強心臓”とは
posted2021/07/28 20:01
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph by
Takuya Matsunaga/JMPA
「卓球混合ダブルスで金メダル!」
26日の午後9時半過ぎ、決勝が終わってまもなく水谷隼/伊藤美誠の快挙を知らせる一報がSNSの速報で流れた。東京体育館の記者席からは満ち足りた笑顔でカメラの放列に応じる水谷と伊藤の姿が見える。世界最強の中国が誇るダブルスペア、許昕/劉詩雯をフルゲーム大逆転で破ったとんでもない2人だ。
これまで五輪や世界選手権を取材するたび、日本が中国に打ちのめされる試合を幾度も見てきた。たとえ互角に戦っても、最後は結局突き放される。そのたびに中国との距離を見せつけられてきた。
今回の決勝は序盤2ゲームを落としてからの苦しい展開。巻き返せるとはにわかに信じ難かった。
水谷はピンチに「とにかく1ゲームさえ取れれば」
第1、2ゲームは完全に中国のペースだった。強敵を相手にゲームの立ち上がりから攻めることを意識して臨んだ日本ペアは、許昕に狙われた伊藤にミスが出て2ゲームを先取されてしまう。
しかし、この状況を伊藤自身が打破する。第3ゲームも2-4でリードされたものの、臆することなく得意の逆チキータレシーブで得点した。すると水谷のフォアハンドドライブも火を噴き、それに触発されるように伊藤も十八番のスマッシュでポイントを奪った。
このときのことを水谷はこう振り返っている。
「負けてはいたものの相手のプレーもそこまで良かったわけではなく、かなり緊張しているというのを肌で感じていた。とにかく1ゲームさえ取れれば何とかこちら側に流れが来るんじゃないかと思っていた」
水谷の読み通り、第3ゲームを取った日本は第4、5ゲームも連取し、ゲームカウント3-2と逆転に成功した。ところがすんなり勝たせてくれないのが中国だ。劉詩雯の安定したプレーで第6ゲームを奪いゲームオールに並んだ。
ついに運命の最終ゲーム。きっとまた中国がギアを上げてくるに違いなかった。