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“内村のいない”体操日本代表は世界の頂点にどう近づいた? 1年前に「3番手」と評された“平均21.5歳の4人”の急成長
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2021/07/27 17:03
男子体操団体で銀メダルに輝いた日本代表。この一年間で大きく成長したチームは世界の頂点に限りなく近づいていた
「僕だけではなく、他の3人も悔しいと思っているので」
萱はこう語っている。
「夢の時間を過ごせました。演技自体もやりきることができたので、すがすがしい気持ちもあります。全員ミスなく、演技をつなぐことができたのは価値があることだと思います」
谷川に残るのも充実感だった。
「(跳馬は)助走の途中から記憶がないような感じです。いつのまにかガッツポーズをしていました。楽しかったです」
敢闘を称えられるべきパフォーマンスを見せた選手たちは、一方で、2位であった結果も自覚する。
「この差0.1はすごく重みがあると感じています。僕だけではなく、他の3人も悔しいと思っているので、またパリに向けて頑張っていきたいです」(橋本)
好勝負を演じて、もてる力を出して、それでも残った0.103点という差の意味を、橋本にとどまらず、考えるはずだ。その差を縮め、上回っていくために何が大切なのか向き合うことは、4人にとって、ここからさらに高みを目指すための糧となる。
3年後のパリ五輪へ、どう取り組んでいくべきか、変化もきっと生まれる。
個人総合決勝には橋本と北園が出場
今大会の団体総合を終えて、2014年の世界選手権を想起する。団体総合で優勝した中国と2位の日本の差がわずか0.100点だった大会だ。
熾烈な争いもさることながら、団体のあとの個人総合で、内村は着地を高精度に決めてみせて優勝を果たした。団体での結果を受けて、すべてを完璧にするという決意の表れのようだった。
7月28日には個人総合決勝が控える。日本からは橋本と北園が出場する。
ROC優勝の立役者、ナゴルニーらを相手に、再び好勝負が期待されるこの試合にも、団体総合の経験をいかすことができる。
そしてきっと個人総合の経験も、これからにいきてくる。
若い2人のパフォーマンスと、その行く末に注目したい。
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