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崖っぷちギリギリでも…横綱白鵬はやっぱり勝つ 照ノ富士との直接対決へ不安要素は?《6場所連続休場明け》
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph byKYODO
posted2021/07/12 17:01
7日目、間合いを取る白鵬(左)と翔猿。大横綱に対して、仕切り線から大きく離れて立ち合うなど、工夫を見せた翔猿だが上手投げで敗れた
これまでは大栄翔や隆の勝、阿武咲といった押し相撲タイプをやや苦手にしていた嫌いもあったが、それももはや克服したと言っていいだろう。長身の大関が終始、膝を曲げて腰が降りた状態で相手の突きを下から徹底してあてがいながらじわじわと圧力をかけていく攻めが目立ってきたが、対戦相手からすればたまったものではない。
綱取りのプレッシャーも初日から微塵も感じられない。自身は「できたらできたで、できなかったらできなかったでいい」と常々語っているが、両膝に抱える“爆弾”はいつ“暴発”してもおかしくない。大関から序二段まで番付を落とし、地獄を味わっただけに綱取りよりも悔いなく相撲人生を終えることに重きを置く苦労人の29歳にとって、重圧など無きにも等しいのかもしれない。
直接対決へ 白鵬の不安要素は?
前半戦を終え、ストレートで給金を直した白鵬、照ノ富士の2人に優勝争いは早くも絞られたと言っていいだろう。大関正代、関脇御嶽海が今ひとつピリッとせずこの先、全勝の両者が“落とし穴”に嵌る姿はちょっと想像できない。強いてあげれば要注意はともに高安戦といったところか。心配な面があるとすれば、手術を行った白鵬の右膝が15日間無事に持ってくれるかどうかであろう。
順当にいけば、白鵬と照ノ富士の直接対決は千秋楽に組まれるはずだ。両者の過去の対戦成績は白鵬の9勝4敗だが直近の対決は4年前に遡り、状況があまりにも違い過ぎて参考にはならない。互いに右の相四つだが、組み合えば現状では勢いにも乗る照ノ富士が有利にも思えるが何とも言えない。白鵬とすればがっぷりを避け、機先を制して一気の出足で勝負を懸けてくるかもしれない。いずれにしても両者の一戦が賜盃を懸けることになれば、照ノ富士の綱取りもかなり濃厚な情勢ということになる。これといった死角も見当たらず、その可能性は十分と見た。
今場所はここまで大きな番狂わせもなく平穏に進んでいるが、星数こそ伸びないもののおっつけのうまさが光る若隆景、しぶとい相撲が身上の明生の2人の新小結が上位陣に対し善戦するなど躍動している。優勝を争う力士だけでなく、こうした“脇役”の活躍があってこそ土俵の充実も図られる。豊富な稽古量と熱心な研究に裏打ちされた彼らの相撲ぶりも優勝争いとは別に必見の価値がある。