サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
松木安太郎63歳が語る、“居酒屋解説スタイル”はどこで生まれたか?「オーストラリアでクリケットを見たことが原点」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/06/17 11:02
松木安太郎さん。1957年生まれ、63歳。1993年のJリーグ開幕からヴェルディ川崎の監督を務めた(写真は93年当時)。その後、95年から解説者としてのキャリアをスタート
だが、02年日韓W杯の開催と前後してスカパー!などの衛生放送が台頭し、いまではDAZNのようなライブストリーミングサービスも生まれ、世界中のあらゆるカテゴリーのサッカーが視聴できる時代になった。普段から衛星放送やライブストリーミングサービスでの放送を中心に見ているコアな視聴者にとって、松木さんの解説はときに緩く、退屈に映ったとしても致し方ない。
松木さんが、解説を始めた95年ごろ、解説者といえば野球解説者のことを指し、サッカーの解説者といえば、かつて三菱ダイヤモンドサッカー(テレビ東京)に出演していた故・岡野俊一郎さん(元日本サッカー協会会長)がいたくらいだった。
指針がなかったなか松木さん自身も当初は特別な意識はなかったが、解説を続けるなかでいわゆる“お茶の間スタイル”の解説が自然と出来上がってきたという。
「僕自身がたまにサッカー以外の競技を見てみると、まず選手の顔と背番号が一致しない。だから自分が解説するときは、初めて観る方にも髪型や特徴などを伝えることで、どんな選手なのかをなるべくわかりやすくしたいという気持ちはありましたね。あとは野球と違ってサッカーは試合が始まると止まることはありませんから、ひと言で伝えようと。より多くゴールした方が勝つ、と単純明快ですし、難しい解説をするよりもワーッと盛り上げた方が面白くなるじゃないですか。
民放はいわばサービス業ですし、いかに視聴者の方に楽しんでもらえるかということはやっぱり大切ですからね」
「クリケットが急に面白くなったんです」
わかりやすさを意識するうえで、“意外な”原点もあったと振り返る。
「もう随分前の話ですが中継でオーストラリアに行った際、空き時間にテレビでクリケットを見ることがあったんです。クリケットはオーストラリアやインドなどではすごい人気で、一晩中放送していたりもする。でも、日本人にはなんとなく野球みたいに投げる人と打つ人がいるものの、ルールがよくわからないから、なんであんなに人気があるのか不思議じゃないですか」