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松木安太郎63歳が語る、“居酒屋解説スタイル”はどこで生まれたか?「オーストラリアでクリケットを見たことが原点」
posted2021/06/17 11:02
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
J.LEAGUE
26年前、解説者に「サッカーを知らない人が多かった時代」
提示された6分間のロスタイムに「ふざけたロスタイムですね~」と不満を口にすると、レフリーが出したイエローカードに「なんなんすか、これ?」と首をかしげ、相手ゴール前でのチャンスで日本の選手が際どいプレーで倒されると「おいっ! PKだ、PKだろ!」と間髪入れずに野次を飛ばす。
日本代表の中継でお馴染みの松木安太郎さんの解説は、まるでお茶の間で観戦しているサポーターの気持ちを代弁しているかのようで、解説というよりも応援に近く、インターネット上では数々の名言が記録されていたりする。
一方で、サッカー経験者やコアなサッカー観戦者が好むような難しい専門用語は極力使わず、たとえばボール保持者の特徴を簡潔に表現したり、背番号と名前をセットで伝えるなど初めて観戦する視聴者にも優しい、わかりやすい解説でも知られる。
95年にNHKのJリーグ中継で解説者として活動をスタートした松木さんのそんなスタイルは、どのように確立されてきたのだろうか。
「93年にJリーグが始まって間もない頃は、視聴者のなかにサッカーを知らない方もまだまだ多く、目線を低くと言ったら言葉が悪いですけども、とくにNHKでやるにあたっては初心者の方にもわかりやすいような放送を目標にしていました。その後テレビ朝日で日本代表の解説の仕事などが増えてくると、こんどはエンタメ性を求める方、とにかく応援したいという方もいて、視聴者層も子どもからお年寄りまでと幅が広い。そんななか、サッカーの面白さや激しさをいかに伝えるかということを考えてきました。
もちろん、いまではコアなサッカーファンも増えて難しい時代にはなってきていると思います。ただ、(CSやBS、インターネットでのライブ中継ではなく)民放地上波での放送ということを考えると、やはりどんな方でも観戦しやすいことが求められるというか、代表戦に限れば一緒に戦う、難しい言葉はなるべく使わないようにする、ということはベースにあるのかなとは思います」
「民放はサービス業ですからね」
Jリーグが開幕した90年代前半、サッカーは地上波で見るのが当たり前の時代だった。