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高校生も帰宅部(約20%)が増えている…現役教師のため息「運動部を減らしたいのにOBOGの反発がすごくて…」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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posted2021/05/31 17:06

高校生も帰宅部(約20%)が増えている…現役教師のため息「運動部を減らしたいのにOBOGの反発がすごくて…」<Number Web> photograph by Getty Images

※写真はイメージ。中学同様に高校でも帰宅部を選ぶ学生が増えている

「大規模校や伝統校ではOBOGからの反発がものすごくて、容易に部活を減らせない。ある学校では野球部をなくそうとしたら、校舎にOBが乗り込んできたこともありました。形式だけでも運動部を残さねばならず、少数の教員で顧問を兼務する。部活を維持するだけでも、現場は大変です」(茨城県、高校教師)

 もちろん、こうした部活リストラがはかどらない背景には、教師側の事情もある。

「学習指導要領で部活は『その他の活動』と刺身のツマ程度にしか書かれていない。それなのに、校務をほったらかして取り組む教師や、PRのために部活をやらせたがる学校というのは、いかがなものかと思います。特に野球部の顧問なんか『俺は野球だけやってればいいだろ』と本気で考えている。『大会の抽選があるので校務休みます』って平気な顔で言われると、『何考えてんの?』と突っ込みたくなります」(前出、茨城県高校教師)

 帰宅部が増えているといえども、中学校同様に、高校でも教師や学校が部活を重要視している事情が窺える。しかし、高校の運動部加入率は約5割と、7割近い中学と比べると大きく減少し、そのかわり文化部や帰宅部の比率が増えており、前述のようにスポーツクラブへの加入率も低い。教師や学校、OBOGたちが部活の必要性を感じているものの、現役の高校生たちのスポーツへの参加意欲はもともと高くないのかもしれない。

「子どもがやりたがっている」幻想

 教育社会学が専門で名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授の内田良氏は、このような状況を「大人たちの幻想」だと指摘する。

「『部活は教育的にいいものだから全員に加入させよう』と教師が思い込んでいるのは、教師自身が体験した素晴らしい学校生活をあじわわせてやりたいというお節介。教師が部活をやりたがっているのではと指摘すると、『いや、子どもがやりたがっているんですよ』と返されます。ただ、それを言うなら『子どもが休みたがっています』『子どもがやめたがっています』とも返すことができます」

 部活に“強制的”に入っている生徒も多いということだろうか。

「例えば大学では、部活に入るかどうかを本人の意志で決めていますが、多くの学生が入っていませんよね。だけど中学校ではほとんど全員が参加してますので半強制ですし、実際に規則として強制にしている学校もあります。周りの教師を含む大人たちが、部活に入るのはいいことだという前提で接するので、生徒はネガティブな声を出しづらいでしょう。『生徒が部活をやりたがっているから、教師も保護者もそれに応えるべき』という教師の論理は、生徒側の忖度によって成り立っている可能性もあります」

中学の30%、高校の15%が部活を必須にしている

 部活に熱中する教師は俗に「BDK(部活大好き教師)」と呼ばれるが、内田氏は彼らをバッサリと斬る。

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