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MotoGP絶対王者マルケスが初めて涙を見せたワケ ケガからの復帰で完走7位、若き挑戦者を迎え撃つ怪物の底力
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/04/25 17:00
ピットでは時折ストレッチなどをして、骨折した左腕を気遣う仕草を見せたマルケス
いまのMotoGPクラスは、厳しい車両規定の中で6メーカーの戦闘力が拮抗している。ホンダRC213Vが厳しい戦いを強いられていることは、リザルトを見れば一目瞭然である。今年はヤマハ、スズキ、ドゥカティを3強とすれば、ホンダは4番手にいる。一昨年までのホンダはマルケスの驚異的なライダーパフォーマンスのお陰でタイトルを獲得してきたと言ってもよく、その状況は今年も変わっていない。
次戦スペインGPは、マルケスが昨年怪我をしたサーキット。因縁のサーキットでどんなレースを見せてくれるのだろうか。次のステップは表彰台獲得となるが、それが達成できれば、完全復活に向けて大きく前進することになる。
メンタル面の成長著しいポイントリーダー、クアルタラロ
そのマルケスが一昨年のシーズン終盤から最大のライバルと目すクアルタラロは、開幕3戦を終えて2勝と好調だ。クアルタラロは「メンタル面の成長を感じる」と語っているが、今季初優勝のドーハGP、連勝となったポルトガルGPは、どちらもタイヤに厳しいレースで、いかにタイヤを持たせるかの戦いだった。その中でクアルタラロは、序盤はトップグループの後方につけてタイヤを温存し、中盤以降、前に出ていくという戦略を採った。焦らず慌てずというスタイル。「とにかく我慢」を覚えたことが結果につながっているようだ。
我慢できるのは、自分の走りに自信がついていることの証明だ。勝っては泣き、転んでは泣くなど、これまで感情をコントロールできなかったクアルタラロだが、ダメなときの自分を上手にコントロールできるようになったのかもしれない。
2019年のシーズン終盤、マルケスを誰よりも苦しめたのはクアルタラロだった。そのクアルタラロがMotoGPクラス初優勝した2020年の開幕戦で、マルケスはコースアウトから転倒という形で戦列を去っていた。名実ともにトップライダーとなり、さらに成長を続けるクアルタラロと、走るたびに回復するであろう王者マルケス。
これから見られる、真の一騎打ちが楽しみだ。