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「予算に限りがあっても…」 鳥栖・金明輝監督が掲げる「チーム7、個人3」の戦術、ヒントを得た欧州クラブは?【インタビュー】
posted2021/04/06 17:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
2021年シーズンのJ1序盤戦でポジティブな驚きをもたらしているのはサガン鳥栖だ。相手や戦況に応じてシステムを自在に変えながら、ポジショニングで優位に立って相手チームを攻略していく。4月2日のセレッソ大阪戦にこそ敗れたものの、リーグ開幕6戦で4勝2分け。この期間はすべて無失点をマークした。そんなチームの指揮を執るのが金明輝監督だ。
2012年から鳥栖のアカデミーを指導し、2018年終盤にトップチーム監督に急遽就任すると降格の危機からチームを救い、翌年5月から再び指揮官を任されている。チームのスタイル構築に取り組みつつ、目の前の試合でどう結果を残すのか。地方クラブゆえの悩みと向き合いつつも全力で監督業に臨む39歳の指揮官に、今季ここまでの戦いぶりや指導哲学などを幅広く聞いた。(全2回/後編はこちら)
――昨シーズンのFC東京戦(○3-0)や柏レイソル戦(○2-1)を見て、すごくいいサッカーをされているなと感じました。王者・川崎フロンターレとも互角の戦い(△1-1)でしたし。さらに今季2節の浦和レッズ戦での完勝(○2-0)に衝撃を受けました。
「それは、ありがとうございます(笑)」
――4月7日に首位の川崎、18日に2位の名古屋グランパスとの対戦が控えているので、その前にミョンヒさんのお話を聞かせていただければ、と思いました。過密日程のなか、ご対応ありがとうございます。
「いえいえ、田舎のチームなので、情報発信する機会が少なく、僕としてもチームとしてもありがたいです。我々のようなチームは、勝って、成績を残さないと見てもらえないし、評価もされない。もっともっと頑張って、こういう機会を増やしていけたら、と思っています」
――さっそくですが、4月2日の7節・セレッソ大阪戦(●0-1)後のインタビューでの「似合わない荷物を背負っていた」という言葉が印象的でした。開幕から無敗、無失点が続いたことで、選手たちがプレッシャーを感じたり、チームが守りに入るようなところもあったのでしょうか?
「6節の(アビスパ)福岡戦くらいからですかね、攻撃で出ていくパワーが薄れてきて、カウンターを食らわないように、といった感じがありました。レッズ戦や3節のベガルタ仙台戦は攻撃で高い位置をどんどん取って、シュートチャンスを作れていたんですけど、ここ2試合は相手に引かれたこともあって、崩せなかった。セレッソ戦に関しては、ゲームの流れを切られて、うまくやられた面もありましたけど、記録を意識した面は少なからずあったような気がしましたね」
勝ったときこそいろいろ言うようにしている
――「完敗」という言葉も飛び出しました。ただ、潔く負けを認めたミョンヒさんの清々しい様子に、「次は負けないよ」という自信も感じられました。
「勝ったときはいろいろ言うようにしているんですよ。満足してほしくないので。逆に、負けたときに、ああだ、こうだ言っても言い訳にしかならないし、問題点は選手たち自身が分かっています。あの言葉は、選手へのメッセージでもありますし、ファン、サポーターの方々へのメッセージでもありました。昨年、残留争いをしたチームが、戦力補強にそこまでのお金を掛けたわけでもないのに、いきなり優勝争いするなんてあり得ない。もう一度、しっかり地に足を付けて進んでいきます、という気持ちを込めて」