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33歳安藤美姫が振り返る“母での復帰”「『出産を経ての復帰は無理だ』という声に疑問を覚えました」
posted2021/04/14 11:02
text by
河崎環Tamaki Kawasaki
photograph by
Nanae Suzuki
2012-2013シーズンの公式試合を欠場していた安藤だったが、2013年7月、テレビ番組のインタビューで「4月に無事出産、母になりました」「最後まで悩んだけれど、1人の女性として生きることを選んだ」と公表。同時に、全日本選手権、そして2014年2月のソチ五輪に挑み、今シーズン限りで現役を引退することも表明した。
フィギュアスケートの世界では、母として競技復帰する前例がこれまでなかったが、すっきりした表情で安藤は言う。「いろいろとご意見もありました。それでも復帰を決めた一番の理由は、娘です」――。現役引退から8年が経った今、改めて安藤美姫に“現役最後の1年”を聞いた(全3回の3回目/#1、#2より続く)。
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「出産を経ての復帰は無理だ」と言われて…
2013年、安藤美姫の長女出産報告と、そのシーズンを最後とする引退宣言を聞いた世間は、またバッシングを始めた。「アスリートなのに出産するなんて、何を考えているのか」。アスリートに恋人がいると報じられるだけでも“選手としての自覚を求める”ような日本社会だ。
「どのアスリートも、アスリートである前に一人の人間。パートナーがいた方が支え合えて頑張れるという人もいれば、そんな時間を作らずに競技に集中するという人もいて、どっちも正解だと思うんですね。私の場合『出産を経ての復帰は無理だ』という声が大きくて、そこに疑問を覚えました」
何より安藤が「現役復帰してから引退する」と決意したのは、娘の存在があったからこそだ。
「9歳からスケートしかやってこなかったけれど、『自分の選んだ道を諦めないこと』の大事さは、娘にきちんと伝えてあげられると思ったんです。それに、日本人である以上は、最初からこれが最後の年ですというのをお伝えしてから選手生命を終えるのが、応援してくださる皆さんに対する1つの礼儀だと」
出産後は「1回転ジャンプ」から練習
そう決めて出産した安藤は、出産から2週間後に大阪へ靴の調整に向かい、1カ月後にはアイスショーに出演した。女性の体は出産で大きく変化し、筋力も落ちるもの。以前のようなパフォーマンスはできなくなっていた自分自身を安藤はどう感じたのか。意外な答えが返ってきた。