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天理・達孝太だけじゃない「投手の逸材揃うセンバツ」 スカウト「辻内の大阪桐蔭時代を思い出した」無名の“新2年生左腕”とは 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKYODO

posted2021/03/23 11:20

天理・達孝太だけじゃない「投手の逸材揃うセンバツ」 スカウト「辻内の大阪桐蔭時代を思い出した」無名の“新2年生左腕”とは<Number Web> photograph by KYODO

宮崎商戦で完投し、初戦を突破した天理・達孝太

 この手足のすごく長い長身右腕には“華”がある。そこにいるだけで、なんだかキラキラしている……「スターの卵」なのだ。

 ダグアウトから彼がグラウンドに現れて、ブルペンに向かって歩いていくその後ろ姿だけで、ついついひと声かけたくなる。ピッチング練習が始まる。しなやかに、伸びやかに、四肢が躍る。それでいて、全身の複雑な連動をつかさどるボディバランスがすばらしいから、美しさすら感じる投球フォームだ。

 実戦のマウンドに舞台を変えても、そのダイナミックな躍動感は変わらない。これだけ雄大な体躯を存分に動かしても、フィニッシュで体をまとめられるのは間違いなく非凡な「能力」だ。いい投手は、投げ終わりで「小さく」なれる。

 190cmを超える長身なのに、達孝太投手のフォームには182、3cmぐらいのまとまり感がある。体力、筋力の強化と球威アップが正比例するタイプだ。

「ムラの激しい投球」

 この日、宮崎商相手のピッチング内容は、ひと言でいうと「ムラの激しい投球」だったろう。 

 プロでも差し込まれそうな145キロがきまったかと思えば、中学生のような抜け球がはさまったり、春先のこの時期だから、彼のような「超・大型」はそれで普通なのだが、新しい一面も見せてくれた。

 要警戒とにらんだ打者には140キロ台。リリースでグイッと押し込んだ速球でスイングを圧倒するが、下位打者には135キロ前後にパワーセーブし、打者のスキルを推し測りながら投げ進めている。

 ピッチングに強弱をつけようとする意識がいい……いいのだが、その「135キロ前後」がすごく速く見えて、逆に驚く。

 ゆったりとしたボディアクションで、軸足に溜めた力を踏み込んだ左足に乗せ換えて、ボールに体重を乗せる感覚を持っている。この「体重移動」があれば、インパクトでかなりドスンと来る重量感をボールは帯びているはず。実際、130キロ前半のボールで下位打者のスイングが圧倒された内野ゴロ、外野フライが6本あった。

スカウト「大谷だって首が細かった」

 ムダに力み過ぎずに、全身のボディアクションで「投げるパワー」を産み出す達孝太の投球メカニズムは、同様に雄大な体躯を誇る2年生右腕・南沢佑音(みなみざわ・ゆうと)(188cm88kg・右投左打)にも引き継がれているようで、今日のブルペンでの投げっぷりには、そちらのほうが気になった場面もあったほどだ。

【次ページ】 スカウト「大谷だって首が細かった」

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