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アシックスが支える“新しい田村優” 華麗なパスと正確無比なキックに加わった32歳司令塔の武器とは?
posted2021/02/25 15:00
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph by
Kiichi Matsumoto
約1カ月の延期を経て、ようやく開幕の時を迎えたラグビートップリーグ。
今季、その話題の中心にいたのは、キヤノンイーグルスの新キャプテンに就任したSO田村優だった。
正確なパスとキックを駆使した巧みなゲームコントロールで2019年ラグビーW杯ベスト8進出に貢献。海外の列強を前にしてもブレないプレーぶりは、世界からも賞賛され、日本屈指の司令塔として歴史に名を刻んだ。
しかし一方で、クールな性格や多くを語らない姿から「キャプテン」のイメージを抱く人は多くはなかったかもしれない。日本代表でリーダーグループの一員を担ったが、今回の主将就任を「吉と出るか、凶と出るか。どっちに転ぶかわからない」と語る関係者も少なくなかった。
田村をキャプテンに指名したのは、新指揮官・沢木敬介だ。エディー・ジョーンズの薫陶を受け、豊富な知識と鋭い戦術眼に定評がある日本ラグビー界の智将だが、何より向上心あふれる集団を作り上げるモチベーターとしての才能も見逃せない。ヘッドコーチ就任1年目から連覇を達成したサントリー時代や、コーチングコーディネーターを務めたサンウルブズでもその実力は証明済み。不安定な戦いが続いていたキヤノンの改革を託されていた。
リーダーの条件について「パフォーマンスで影響を与えられる選手」と即答していた沢木は、チームに合流してまず「ラグビーが一番うまい」と評価する田村をリーダーに据えた。それはチームの視線と基準を上げるというメッセージだったのだ。
田村自身も「キャプテンになってもやることは変わらない」としながらも、「敬介さんだったら(就任を)言われるかなと思っていた」と快諾。プレシーズンマッチでは優勝候補のサントリーに勝利するなど、田村主将を中心とした新チームには大きな期待が集まっていた。