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巨人・桑田真澄コーチ「9回完投135球」論の本質 “昔の俺たちは凄かった”的OBと似て非なるワケ 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/02/14 11:00

巨人・桑田真澄コーチ「9回完投135球」論の本質 “昔の俺たちは凄かった”的OBと似て非なるワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2013年、東大野球部を指導したころの桑田真澄コーチ。「9回135球」論には深い思考がありそうだ

 その桑田氏が、「プロ野球の先発投手は135球を投げて9回完投を目指すべき」と主張したのはかなりの驚きだった。「体が完成されたプロと、高校生以下では状況が違う」ということではあろうが、その段差の大きさに、最初は正直なところ戸惑った。

高校野球の球数制限への意見は変わっていない

 昨年12月に神戸で開催された整形外科学会のシンポジウムに桑田氏はシンポジストとして出席している。2019年11月に日本高野連が導入を発表した「7日間で500球以内」という球数制限に対して「全く意味がない」と痛烈に批評し、球数制限のメリットは「選手」にあるが、デメリットは開催する高野連、放送するメディアなど、期日内に日程消化をしなければならない「大人」にあると指摘した。

 少なくとも高校生以下の「球数制限」に関しては桑田氏の意見は変わっていなかった。

 実はそのイベントのあと、楽屋で桑田氏としばらく話をする機会を得たのだが、突然だったこともあり「9回完投135球」について聞きそびれてしまった。

 しかしその後の桑田氏の言動や、コーチとしての活動を見聞きしていると、桑田氏の言わんとするところが少しずつ見えてきた。

実は日本の先発投手は“投げな過ぎ”?

 昨今のNPBは規定投球回数に達する投手が激減している(2010年はセ・パ合わせて28人、2020年は14人)。これは先発投手の投球回数が減少していることを意味する。

 今のNPBの先発投手は中6日、つまり週1回しか投げない。であるのに6、7回、100球前後で降板する投手がほとんどだ。

 MLBでも先発投手は100球前後で降板するが、こちらは先発の登板間隔は4~5日だ。

 NPBでは143試合制では3000球を投げる投手はシーズンに1、2人しかいない。2019年は、26先発で3007球を投げたソフトバンク千賀滉大1人だったが、MLBでは162試合制だった2019年では34先発で3687球を投げたトレバー・バウアー(インディアンス、レッズ)を筆頭に29人の投手が3000球以上投げている。

 NPBの先発投手は投げな過ぎではないか、という意見は桑田氏以外からも出ていた。

【次ページ】 MLB的な考えだと「135球」はあり得ないとなるが

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