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<現役最終戦に秘めた思い(9)>
高橋礼華「満ち足りた旅の終わりに」
posted2021/02/03 08:00
全英オープン準決勝、対戦した福島・廣田の「フクヒロ」ペアは、その後大会初優勝を果たした
text by

鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
KYODO
2020.3.14
バドミントン全英オープン女子ダブルス 準決勝
成績
福島由紀・廣田彩花 2-0 高橋礼華・松友美佐紀
(21-12、21-12)
◇
2020年3月、高橋礼華はいつものように遠征に出るためのスーツケースを引っ張り出した。向かうのはイギリスで開催される全英オープン、東京五輪代表をかけたポイントレースを大きく左右する国際大会である。
これまでと違ったのは、いつもなら一つで済むはずのスーツケースをもう一つ余分に持っていかなければならなかったことだった。中国の地方都市、武漢の生鮮市場で初めて感染が認められた新型のウイルスは静かに、そして急速に世界へと広がっていた。その影響で、出国すれば、そこから2カ月は日本に帰らず転戦することになると言われていた。
《夏冬用の服、白米などを詰めながら、またいろんな国にいかないといけないなあ、と考えていました》
日の丸を背負ったバドミントン選手はほとんど「旅人」と言っていい。五輪出場選手は国際大会で獲得したポイントのランキングによって決められる。「オリンピックレース」と呼ばれるこの長丁場の戦いのため、1年の半分ほどを海外で過ごさなければならない。
30歳を目前にした高橋は、かれこれもう10年もその旅を続けていた。金メダリストになる前も、金メダリストになってからも……。自分でそうしなければならないと思っていたし、周りもそれを望んでいたからだ。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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