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【箱根駅伝】創価大はなぜ10区で逆転された? 完璧だった榎木監督の起用法、たった1つの“誤算”とは 

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折山淑美

折山淑美Toshimi Oriyama

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/01/28 11:03

【箱根駅伝】創価大はなぜ10区で逆転された?  完璧だった榎木監督の起用法、たった1つの“誤算”とは<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

箱根駅伝10区で駒大に逆転を許した創価大・小野寺勇樹。総合優勝の期待がかかる重圧の中、大手町までその襷を運んだ

1万m上位10名の平均記録が13番目でも自信を持てた

 その手応えが確信めいたものに変わったのは、12月に静岡県島田市で行った最終合宿でだった。全員が練習を順調にこなし、15kmの単独走トライアルでも8人ほどの選手が、昨年の箱根駅伝1区で区間賞を獲得した当時の日本人エース・米満怜(現コニカミノルタ)のタイムを上回ったからだ。

 この合宿には、榎木監督がハーフマラソンのトライアルをあえて気温20度ほどの悪条件で行って数字以上の手応えを持たせたのと同じように、風の強い島田で合宿をすることでタフな精神力を育成する意図もあった。

「合宿の内容も前の年は30kmの予定を25kmに落としたりしていたが、今回は予定通りに30kmを行えた。しかもすごく風の強い河川敷でやったので、選手たちもどんなに向かい風が来ても、これを経験しておけば大丈夫だと思ってくれたみたいで。そのあとの15kmだったし、タフな練習の中の単独走で米満の記録を上回ったというのが一番、選手たちには自信になったと思う」

 と榎木監督はいう。1万mの公認記録ではエントリー上位10名の平均が13番目という状況でも、その数字に現れない自信も持てるようになり、選手たち全員がそれまで半信半疑だった“総合3位”を「これならいけるかもしれない」と信じられるようになったのだ。

「自分たちは上がっても、他の大学も絶対に上がっている」

 とはいえ、前回優勝の青学大や2位の東海大に加え、全日本優勝の駒大や3位の明大などがいる中での3位以内が厳しいのは変わらない。福田は「去年よりハイペースの展開になると思っていたし、自分たちの記録は上がっていても他の大学も絶対に上がっている。それを考えたら5位になれたらいいかな、というくらいの感覚はありました」と話す。

 それが周囲の見るところだろうし、選手たちの心の中にもあった正直な思いだっただろう。だがそうだったからこそ、創価大の選手たちは変に力むこともなく、自分の力を思い切り出し切ろうという気持ちで臨めた。

 榎木監督が強い順に並べたという往路は、全員が区間上位で走ってくれると信頼し、11月中旬には心の中で決めていたままの区間配置だった。1万m28分19秒26を持つ1区の福田は「状態が良ければ区間賞もワンチャンスあったかもしれない」と言うが、1週間前に足の状態が少し悪くなった時点で先頭と20秒差の5位以内と目標を定めた。そしてレースでは本人が一番危惧していた苦手な下りでスパートをかけられる展開になったが、3位集団で粘りの走りを見せて先頭に15秒差の3位でつないだ。そして2区のフィリップ・ムルワ(2年)は東京国際大2年のイェゴン・ヴィンセントを待ち、彼のペースに合わせて一緒に行く冷静な走りをして終盤は伸びなかったものの区間6位の走りで2位まで上げた。

【次ページ】 すべて完璧だった榎木監督の唯一の計算外

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