長身投手のタテの角度が、打者をヘッドアップさせる角度ならば、石川の斜めの角度は、打者の下半身の動きを崩す角度であろう。

　クロスファイアーの球筋は、右打者には踏み込みを封じ、左打者には腰を退かせる。石川の必殺兵器だったスクリューは、沈むシュートの球筋となって、右打者には腰を退かせ、左打者には踏み込みを封じる。

　167cmのサウスポーは、いつでもストライクのとれる変化球と斜めの角度と、見た目よりずっと生命力を秘めた130キロ後半の速球……いや、プロでは140キロ前半にアベレージを高めた速球で、昨年までのプロ19年間で「173」の勝ち星をあげてみせた。

　そして、今季もスワローズ投手陣の貴重な一員として、きっとあの凛とした投げっぷりを見せてくれるはずだ。

　167cmのあの小さな体の中に、いったいどんなマグマが隠れているのか。

　私たちにはわからない懸命な精進と、自分自身の体をいつも極力健全な状態に保っておくための骨折り。石川本人以外の、家族であり、球団のスタッフであり、彼の周囲の人たちの骨折りがあったに違いない。

　そして私には、今もあの東芝グラウンドの外野を、まるでバネの塊のように伸びやかなストライドで走りまくる“青山学院大・石川雅規投手”が、1m80cmぐらいの姿で見えているのだ。

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