濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
22歳林下詩美に“ビッグダディ三女”の肩書はもういらない 「初ずくめ」スターダム後楽園大会のスピード感
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/01/23 17:00
キャリア2年半ほどのチャンピオン、林下詩美は圧巻の貫録を見せている
パウダー攻撃で顔面が青く染まったジュリア
セミファイナルは“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム選手権。初めてのノーDQマッチで王者ジュリアが刀羅ナツコを下した。DQとはDisqualification(失格)の略。反則負けがない=反則・凶器使用OKというルールだ。
序盤からパイプ椅子の山に投げ捨てられ、テーブルの上に寝かされてのボディプレスを食らったジュリア。パウダー攻撃で顔面は青く染まった。だがナツコの背中の上に瓦を積んで粉砕(プロレスの凶器で瓦が使用されるのはおそらく初)、相手の代名詞であるチェーンを奪って首を絞め上げ、そこからグロリアス・ドライバーでベルトを死守した。アイスリボンを離脱して1年あまり、ジュリアはすでにスターダムの“顔”の1人になっている。
22歳、キャリア2年半ほどのチャンピオン林下詩美
そしてメインだ。“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムのチャンピオンは林下詩美。昨年11月“スターダムのアイコン”岩谷麻優に勝ってベルトを巻いた。22歳、キャリアはまだ2年半ほどの若いチャンピオンだ。
挑戦者の舞華もデビュー1年8カ月の新世代。赤いベルト挑戦どころか後楽園でのシングルマッチのメインイベントも初めてだった。林下と舞華は、昨年1月にはフューチャー王座をかけて対戦している。その2人が、1年経って団体の頂点の座をかけて闘うのである。
“初”づくしの大会、そのメインにふさわしいカードだ。次々と新しい光景が現れるスピード感が、今のスターダムの原動力になっている。
といって、このタイトルマッチに“若い2人が必死に背伸びをする”といった気配は薄かった。林下も舞華も大型ファイターであり、佇まいが堂々としている。特に林下は、まだ2度目の防衛戦ながらチャンピオンらしい雰囲気を身にまとっていた。親近感よりも“憧れ”で見るタイプ、あるいは「様」をつけて呼びたくなる選手と言えばいいだろうか。入場時、リングサイドの女性ファンにメッセージ入りの薔薇一輪を手渡した場面には思わず見惚れるものがあった。