フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
“少女から大人”へ 15歳アリサ・リュウがフィギュア全米選手権で見せた変化…演技も容貌も
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/01/19 11:01
全米選手権で大人っぽい演技を披露したアリサ・リュウ
「周りの人には、変わったね、と言われます」
「鏡を見て、『これ誰?』と自分で思うことはないの?」と米国記者が、ズーム会見で尋ねるとリュウは笑いを含んだ声でこう答えた。
「私は自分の顔を毎日見ているので、それほど変わったとは感じないの。でも周りの人には、変わったね、と言われます」
成長と怪我で大技を失う
この1年で、身長が3インチ(およそ7.5センチ)伸びた。パンデミックで3カ月氷上で練習ができなかったのと、成長期がちょうど重なったのだろう。少女体形から、しっかり筋肉のついたシニアスケーターの体形になり、同時に顔も大人びて15歳には見えないほど女性らしさが増した。
このスポーツでは、特に女子は体重が300グラム増えるとジャンプに影響があると言われる。リュウも体の重心が狂って、しばらくジャンプが跳べなくなったという。10月末に出場した米国内のチームイベントで、前日の練習中に3アクセルの着氷で転倒し、右臀部を負傷。当日は痛みのため、2回転ジャンプしかできなかった。
「3アクセルの練習を再開したのは、全米選手権の2週間前。筋肉の記憶のおかげなのか、わりとすぐに降りられるようになりました。でも成功率はまだそれほどでもないので、この大会では入れないと決めていました」
演技後そう語ったリュウは、大技なしでもSPは2位スタート。だがフリーでは細かいジャンプミスが出て、総合4位に終わった。
ジャンプの天才と言われた少女が、成長してからジャンプを失って凡庸になるというのは珍しい話ではない。だがリュウがラスベガスで見せた演技は、凡庸とは程遠かった。
ニコルらしい複雑で凝った振付
SPはニーノ・ロータの「道」、フリーはハンガリーの作曲家ハヴァシ・バラージによる「The Storm」で、いずれも振付はローリー・ニコル。女道化師を表現したSPも、中近東のエキゾチックな雰囲気を醸し出したフリーも、ニコルらしい複雑で凝った振付である。若い選手はジャンプに集中するあまり、振付の表現がおざなりになるのは仕方のないことだが、今年のリュウは違った。