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PSG史上最高監督カルロ・アンチェロッティが明かす“1番つらい瞬間”「心から泣くときもよくある」
posted2021/01/16 17:00
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph by
Pierre Lahalle/l’Équipe
カルロ・アンチェロッティは、2019年12月からエバートンの監督を務めている。2011年にチェルシーを離れて以来、8年ぶりのプレミアリーグ復帰である。イングランドに戻って10カ月が過ぎたアンチェロッティのロングインタビューを、『フランス・フットボール』誌11月3日発売号は掲載している。
ユベントスをはじめACミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリー、バイエルン・ミュンヘン、ナポリとヨーロッパの最前線で戦い続けてきたアンチェロッティが、どうしてエバートンという一見地味なクラブでの仕事を引き受けたのか。
だがそれよりも、ヨーロッパの大物監督のなかでアンチェロッティを際立たせているのは、その人間観・選手へのスタンスである。ティエリー・マルシャン記者との応答(ワッツアップによるビデオインタビュー)でうかがえるのも、深い愛着に溢れた人間哲学であり選手への強い感情移入である。
「心から泣いたときもあった」と語るアンチェロッティの監督としての生き様を2回にわけてお届けする(全2回の1回目/#2に続く)。
(田村修一)
◆◆◆
わずか2カ月でクビになるところだった
――監督として最初に臨んだ試合を覚えていますか?
アンチェロッティ もちろんだ。1995年(8月28日)のセリエB、レッジャーナ対パレルモ戦だった。結果は0対0の引き分けに終わった。
――心に鮮やかに蘇りますか?
アンチェロッティ ああ。私が指揮した他のすべての試合と同様によく覚えている。もちろんそれぞれに程度の差はあるが、私は記憶力がいい方だから結果はもちろん起用した選手もハッキリ覚えている。1年目のスタートが最悪だったことも。
レッジャーナは前季セリエBに降格して、直ちに昇格するために私が招聘された。たが、第7節を終えて1つも勝てず、3分4敗で最下位に沈んだ。私はわずか2カ月でクビになるところだった。私の監督としてのキャリアはそんな風に始まったが、シーズンが終わったときには昇格を果たすことができた。
――当時のカルロ・アンチェロッティと現在のカルロ・アンチェロッティでは何が違いますか?
アンチェロッティ それは……、性格はずっと同じだけど、それ以外はかなり変わった。とりわけ練習方法は大きく変化した。今日の方がずっと複雑だ。以前は15人だったのに今は25人を指導しなければならないし、方法論も同じではない。ただ、私自身の情熱と、周囲の人たちとの関係は変わってはいない。
指導の基本は「選手ではなくまず人間として見る」
――あなたと選手の関係は自然にできあがったものなのか、それともあなたが意図的に築いたものでしょうか?