いつもいるお客さんが、今シーズンはいない

　さみしいのは、ビールを通して楽しんでいたお客さんとの会話が制限されてしまうこと。

　世間話からジェッツについての話まで、500円のビールを1杯売る間にも色々なやり取りがある。

　でも今は、ひとりのお客さんと長く接しないようにと言われている。だいたい1分以内で1人のお客さんの前から去るのが目安だ。

「いつも、元気が良いよね」

　そうやってほめてもらえるくらいに、頑張って売っていたスタイルも、今は変えないといけない。

　お客さんも声をあげて応援したい気持ちを抑えている。私たちも、会話のキャッチボールを楽しむのは、しばらくは我慢しないといけないのかもしれない。

　もちろん、特別なシーズンの影響を感じる場面は他にもある。

　○○さん、どうしているのだろう。

　そんなことを考えながら、ビールを売る日が少なくない。

　昨シーズンまでならいつもアリーナに来ていた方が、今シーズンはいなかったりするのだ。

　今シーズンは年間シートの販売がなく、試合ごとにチケットを買わないといけない。常連さんにとっても大変な状況だ。

　入場者の上限があってチケットが取りづらくなっているからなのか。

　それともコロナ禍でアリーナに来るどころではないのか。

　あの人がほとんど来なくなってしまった理由はわからない。

　みなさんがアルバイト先の仲間に会うのを楽しみにしているように、顔なじみのファンの方と顔を合わせるのは私にとっての楽しみなのだ。

開場前の撮影時のみマスクを外しました　(C)Yusuke Mimura

「君がいるからビールを買うんだ」

　ただ、全体的にみれば、今のところは想像していたよりも寂しさは感じずに済んでいる。

　いつも年間シートを買われている方は、やはり今シーズンもジェッツを熱心に支えてくださる方たちだった。試合ごとにチケットを予約するから、毎回完璧に同じ席を買えるわけでもないみたいだけれど、常連さんたちはほとんど同じエリアの同じようなアリーナの風景が見える席から観戦している。

「君がいるからビールを買うんだ」

　そう言ってくださる方が一人でもいる限り、簡単には休めない。私がいなければその方のジェッツのホームゲームの楽しみが減ってしまうかもしれないから。

　たとえ他の人にも言ってそうな言葉に聞こえたとしても私はその言葉を信じるし、その一言で繋がっていられるのがこの仕事の素敵なところなのだ。

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