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名守護神カーンが今や名取締役 「成功だけが数えられる」バイエルン、5冠後も進化する規律と伝統 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/01/07 11:01

名守護神カーンが今や名取締役 「成功だけが数えられる」バイエルン、5冠後も進化する規律と伝統<Number Web> photograph by Getty Images

5冠後も安定した強さを見せるバイエルン。カーンらフロントも一枚岩だ

「ハンシィの仕事ぶりで私が特に魅了されているのが、チームに規律を植え付け、ファンがいないスタジアムでもそれぞれのパフォーマンスをしっかりと引き出していることだ。観客はサッカーにとっては大事なエッセンスだ。もし私が現役選手だったらどうだったか。ファンの存在は私にとってスープにおける塩のような大事な要素だ。それだけにチームの取り組みはファンタスティックだよ」

 プロクラブにおける指揮官に求められる人間力というのは、人の好さのことではない。選手の話を聞く姿勢を持ち、理解を示し、だが厳格な決断を正しく遂行していけなければ選手はついてこない。選手を信頼しているということは、どんな状況でも起用するということではないはずだ。

途中出場・途中交代サネに対する興味深い対応

 その点で、フリック監督のドイツ代表レロイ・サネに対する対応は興味深い。

 昨夏マンチェスター・シティから5000万ユーロの移籍金で獲得されたサネは、まだ本調子とは言えない。前述のレバークーゼン戦ではスタメン出場していたキングスレー・コマンが負傷したことで32分から途中出場したが、その36分後に途中交代となっている。

 試合後、フリック監督は明確にその理由について説明していた。

「意味のある選手交代をしなければならない。ジャマル・ムシアラを投入しようと思ったわけだが、そのためにミュラー、(セルジュ・)ニャブリ、サネの誰かを下げなければならない。後半のプレーから考えてみた。トーマスは外すことができない選手だ。いつでも賢い決断をすることができる。スペースにおけるポジショニングが優れているし、90分間チームのためにプレーすることができる。セルジュは後半にパフォーマンスが上がってきていた。そうなるとレロイを下げるしかオプションがなかった。最終的にはチームにとって何が一番必要か、それが重要となる」

この采配にメディアは飛びついたが

 ミュラー、ニャブリと比較してサネは細かいミスが多く、リズムを上げていくチームの流れにも乗れていなかったのは事実。それでも期待の選手がこうした処遇を受けたことに、ドイツメディアは飛びついた。

「サネはバイエルンにふさわしくない」

「だからグアルディオラはサネを引き留めなかった」

 そんな元代表選手のコメントが飛び交う。

 そんな状況を見てか、カーンは『ビルト』紙のインタビューで一石を投じている。

【次ページ】 サネ自身も信頼を感じつつ自らを“批判”

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