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2度のダウンから大逆転のKO勝ち 中谷正義が聖地ベガスで“年間最高レベル”の劇的試合を生むまで
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/12/15 11:02
中谷正義(帝拳)がフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に9回TKO勝ち。序盤に2度のダウンを奪われながら、終盤に逆に2度のダウンを奪い返すというドラマチックな大激闘だった
「もう1回、ロペスにチャレンジしたい」
ベルデホ戦の前後、中谷は何度かそう述べていた。昨年7月に中谷に苦しんだロペスはその後、態勢を立て直し、今年10月には現役最強と評価されていたワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の攻略に成功。これでライト級の4冠を奪取したロペスは商品価値も大きく上げているだけに、一度勝っている中谷とのリマッチには魅力を感じないかもしれない。
ただ、ライト級では減量苦のロペスは近未来に昇級する可能性が高く、その場合には複数のタイトルを一気に返上することになる。トップランクのカール・モレッティ副社長は、「中谷にも王座決定戦に出場のチャンスがある」と明言していた。今後しばらくは休養が必要としても、今回の激闘で知名度を上げた後、中谷がハイレベルのライト級で2021年中に世界戦を実現させても驚くべきではないのだろう。
生粋のファイター・中谷正義
話していても飄々としていて掴みどころがなく、期待感をはぐらかすような言葉も多い中谷だが、世界戦への希望を尋ねた際、はっきり「そのためにボクシングをやってます」と返してきた。痩身だが、驚くほどにタフ。鋭いジャブを持っているにもかかわらず、極めて好戦的。様々な意味でギャップの多い中谷は、一見、クールなようで根底に熱さを感じさせる生粋のファイターである。
こういう選手はアメリカでも好まれる。2戦続けて好ファイトを見せ、ここで大きな勝利を手にした。世界戦の舞台で再び熱い試合を見せてくれるのを楽しみにしているのは、もう日本のファンだけではないはずだ。