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なぜBTSはこんなに応援したくなるのか……「アスリートとファンの構造」に通ずる“4つの理由”
text by
竹田ダニエルDaniel Takeda
photograph byGetty Images
posted2020/11/20 11:03
8月にリリースした『Dynamite』はBillboard Hot 100で1位を獲得した
メンバー自らがプロデュースで積極的に参加しているBTSの楽曲も、「人間としての成長」「自分自身と向き合い、自分を愛することの重要性」など、深く精神的なテーマが歌詞に込められることが多い。楽曲以外の場でもメンタルヘルスについて発言し、特にリーダーであるRMはライブでこんな言葉を発信している。
「僕を利用して下さい。BTSを利用して自分自身を愛して下さい。皆さんが僕に自分自身を愛する方法を教えてくれたことのように」
アスリートがメンタルヘルスや「弱さ」について打ち明けることが人間的な共感と支持に繋がるのと同じように、アーティストが「人間らしさを打ち明けること」が魅力に繋がる事例は近年増えている。
BTSのメンバーが自らの心情を誠実に語り続けることは、彼らの意思が伝わると同時に、リスナーを「どう生きるべきか」という固定観念やプレッシャーから解き放つ。上質なエンターテインメントを通して、深くて複雑な感情をリスナーは受け取り、自分の感情とのコーピングに活用することができるのだ。
ちなみに「防弾少年団」というグループ名のコンセプトは、「弾丸のように若者を襲う固定観念や批判、重いプレッシャーを遮断して、若者の価値観や理想を守る」という活動目標から由来している。アルバムシリーズを”LOVE YOURSELF”と名付けるなど、そのコンセプトは今も変わらない。
その4)“ロールモデル”として機能している人間性
本家のアスリートにもBTSのファンは数多くいる。先日、2度目の全米女王となったプロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手もその一人だ。
大坂なおみ選手は、Black Lives Matter運動に積極的に参加。全米オープンで、犠牲者の名前を記した黒いマスクで人種差別に抗議したことは記憶に新しい。BTSもBlack Lives Matterの支援団体に100万ドルを寄付しているが、何より注目すべきは、それに呼応するようにBTSファンたちが「#MatchAMillion」というタグを使って、1日で100万ドル以上の寄付金を集めたことだ。
これ以外にも、メンバーの誕生日に世界中のファンが団結してチャリティに寄付をする独自の文化があるのは珍しい。これまでARMYが行ってきたチャリティプロジェクトは、地球規模での地図が存在するほど。
実際のアンケートでも、「人柄、人権意識を持って発言する倫理観への信頼」にまつわる答えが多かった。自分らしく生きることや固定観念から自由になることの大切さをファンに向けて伝えるだけでなく、「より良い人間」になるための具体的な行動も示すことで、社会的責任と影響力をポジティブに行使していくアーティストとして認知されている。