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事務所受付2坪の田舎町クラブだけど、サッスオーロが“サッカーの理想郷”なワケ
posted2020/11/13 06:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
セリエAに新たな“プロビンチャーレの星”が現れた。
北部エミリア・ロマーニャ州の小さな町のクラブ、サッスオーロが7節を終えて無敗、堂々の2位につけている。
首位ミランより2日早く戦った7節では、5バックを敷いたウディネーゼの徹底防戦に遭い、惜しくも首位獲りを逃した。指揮官デゼルビの言葉に悔しさがにじみ出る。
「最終ラインから70mまではうまくやれたが、相手ゴールまで残り30mで詰めきれなかった。勝ちたかったな」
就任して3年目、これまでにまいた種が実をつけ始めた。小さな町に息づく理想のサッカーを実らせるときなのだ。
サッスオーロの特長ははっきりしている。点を取りにいくサッカーだ。ゴールの権化アタランタと並んで、7節までにリーグ最多18得点を奪った。
選手たちは狭いトライアングルで相手を追い込むプレスを下敷きに、重心を高く保ちながら、4-2-3-1の布陣の中で縦横無尽にボールを回す。
高く張ったGKも交えたパスワークは地元紙から“蜘蛛の巣”に喩えられる。最大2タッチで「低く、早く」が監督から叩き込まれた合言葉だ。
「すべてのパスに理由があるんだ」
エースFWカプートに左利きの技巧派MFベラルディ、リーグ最強ドリブラーのMFボガなどタレントには事欠かないが、まずは司令塔ロカテッリを軸にボールポゼッションから崩すスタイルありき。5節までに記録した試合平均63.2%のボール保持率は、リーグベストの数字だ。
攻め続けるスタイルで1-3の劣勢から4-3と大逆転勝ちを収めた4節ボローニャ戦の白星も印象深い。
「すべてのパスに理由があるんだ」
ボローニャ戦で反撃の口火を切るチーム2点目を決めたMFジュリチッチが、地元紙インタビューの中で発した言葉に躍進の答えが潜んでいる。