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照英が吠えた!45歳で再び日本一を目指した理由…「室伏長官」へのメッセージとは?
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/11/11 11:04
昨年、全日本マスターズで日本一に輝いた照英さん。日本代表として臨むはずだった世界マスターズは中止となった
次の目標は世界一?
――練習も相当ハードだったのでは?
かなりハードでしたよ(笑)。練習は18年に始めてから日本一なるまで1年間、仕事後に土手を2時間ぐらい走ったり、空いた時間を見つけては地元のスポーツクラブに通いました。ジャグジーがあるような施設に行くと甘えちゃうから、300円をチャリンと払って、ハングリーに鉄アレイでガンガンやってました。体重も5kg増えましたね。頑張った甲斐がありました。
――スバリ次は「世界一」ですか?
そう思っていたんですけどね……このご時世で、今年の世界マスターズは中止に。日本の国旗を背負って、世界チャンピオンになるぞ! と練習を続けていましたが、自分の中で情熱の糸がプチッと切れちゃいました。芸能のお仕事にも迷惑をかけられないので、ジムにも行っていませんし、本格的なトレーニングはまるまる1年やっていないです。
――もし出場できていたら……自信はありましたか?
どうですかね、自分ではおもしろいところまでいけるかなと思っていました。来年は関西で行われるんですが、東京五輪と同じ時期ですから、出るとなると少なからず仕事にも影響してきます。それに五輪ですら開催が危ぶまれている状況です。練習も自宅や、河川敷でダッシュぐらいしかできないことを考えると、厳しいと思っています。
戦う“理由”がより重要になる
――モチベーション維持も難しい?
マスターズって気持ちを整理して、スタートラインに立つことが何よりも難しい。何のためにやるのか、しっかりと自分を奮い立たせないと怪我してしまう。実際に私も肋骨にひびが入りました、ウェイトトレーニングのやりすぎで(笑)。やっぱり骨も細胞も20代とは違う。
だから我々世代は、アスリートの気持ちを取り戻す“理由”が絶対に必要。日本一を目指した時は、No.1になる、家族に見せたい、そんな思いがありましたが、現状はそれに代わる要素がなかなか見つからないんです。
――東京五輪の延期など、アスリートのモチベーション維持が懸念されていますね。
比べること自体がおこがましいですが、まさしく東京五輪の選手もそうだと思います。今年の選考会で選ばれた選手が来年、同じ記録を出すことはとてつもなく難しい。アスリートにとって1歳年をとることはすごく大きいんです。今年落選した選手の方がかえって目標が立てやすいし、伸び代があるわけですよ。アスリートの皆さんはそういう弱音を吐きませんが、心の部分では相当苦労していると思います
――逆に言えば、全日本マスターズは相当の思いで臨めたと。
もう全身全霊でした。マスターズには昔を思い出すために参加したという人がいれば、私のように本気で優勝を狙う人もいる。いずれにしてもそこにパワーを向けるだけの価値ある大会でした。だって、表彰台では吠えちゃいましたもん。あれだけ吠えたのは『スポーツマンNo.1決定戦』以来かな。子どもたちも少し驚いていました(笑)。それでも家族に優勝する姿を見せることができてよかったなと思います。