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天皇賞・秋、クロノジェネシスがアーモンドアイに挑む! 鞍上・北村友一が狙う“あのシーン”の再現
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byKyodo News
posted2020/11/01 06:02
第61回宝塚記念を圧勝したクロノジェネシス。アーモンドアイの偉業を阻む馬がいるとしたら彼女かもしれない
クロノジェネシスほどの名馬には出会えないかも
では、天皇賞・秋でアーモンドアイの新記録を阻むのはどの馬か。その筆頭に挙げられるのが、GI馬が8頭も顔を揃えていた6月の宝塚記念を、ぶっちぎりの6馬身差で制したクロノジェネシスではないか。2歳の秋に440kgといういかにも牝馬らしい体でデビュー勝ちしたあと、レベルの高いレースでずっと走り続けて11戦。鍛錬を重ねながら、デビューから1年10カ月後には464kgとスケールアップを果たしていたところに、この馬の希有な成長力が見てとれる。
強豪牡馬相手に激走したあとは、いつものようにノーザンファームしがらきに放牧に出て調整。10月1日に帰厩したときの馬体重は484kgまで大きくなっていた。「いかにも休み明けという雰囲気ですね」と言った斉藤調教師。字面だけ見るとガッカリしたような印象を受けるかもしれないが、表情は柔らかいものだった。これを受けた主戦の北村友一騎手が、「競馬を使いながら40kg以上大きくなったんですよ。こんな馬、います?」と声を弾ませる。全11戦の手綱を取り続け、オークス(コンマ4秒差の3着。432kg)から秋華賞(452kg)への5カ月の間に20kgも体を増やして、なおかつ快勝に導いた経験が北村の自信につながっている。
「僕の騎手人生はまだまだこれからと思っていますが、クロノジェネシスほどの名馬に今後また出会えるのかどうか。生涯最高の経験をさせてもらっていることを噛みしめながら、この馬との濃密な時間を楽しんでいます」と北村は言う。少し間を置いたあと、「感謝という言葉しか思いつきません。まずは、常に全力で走ってくれる馬に感謝。そして、これほどの馬にずっと乗せ続けてくださる斉藤先生をはじめ、関係者の皆さんにもそれだけでは言い表せないぐらい感謝しています。僕ができるのは、その恩に報いる結果を持ち帰ってくることだけなんです」と、いまにも込み上げてきそうな感情を吐露したのだ。