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「99人がネット転売しても…」松坂世代“最後の野手”渡辺直人の神対応エピソード
posted2020/09/24 11:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
プロ野球選手としての終着駅は楽天で。
それは、渡辺直人(39)が8年ぶりに楽天のユニフォームに袖を通した2018年の時点で、すでに希望していた道だった。
「一番の理想は、最初に入った球団で引退できること。僕は横浜(DeNA)と西武でもやりましたけど、もう一度、イーグルスに呼んでもらってね。最後の球団だと思っていますし、ここで終われるのは幸せですよね」
2年後の20年9月13日。
07年に入団してから4年、18年に復帰してから3年。7年もの間、楽天にすべてを捧げ、「直人」とファンから親しまれる男は、14年のプロ野球人生にピリオドを打つことを発表した。
引退会見でも強く謳っていたように、直人は全力プレーの代名詞のような選手だった。
野球は言わずもがな、選手とのコミュニケーションやファンサービスにおいてもそうだった。直人の想いが蘇る。
「そのスタイルっていうのは、イーグルスに入団したから培えたもので。常に全力。野球を楽しむこともそうだし、それ以外でも自分にできることを一生懸命やるって気持ちがあったからこそ成長させてもらえましたからね。そういうのって、歳をとったら忘れがちになるけど、自分はそこを妥協せずにやれたんじゃないかなって思っています」
「99人が転売しても……」忘れられないエピソード
そんな直人を語るうえで、忘れられないエピソードがある。
まだ楽天の若手だった頃。選手のサインがインターネットオークションで出品されていることが問題となり、球団がファンへのサイン自粛を促したことがあった。選手の善意を踏みにじる行為ではあるものの、ファンサービスを重視している球団としては苦渋の決断ではあった(※現在は新型コロナウイルス感染予防対策として、サイン応対等の選手によるファンサービスを当面の間、自粛中)。
だが、直人だけはサインをやめなかった。理由は無論、ファンのためである。